イランは「ピスタチオの国」と呼ばれる。おいしいピスタチオを多く産出するからでもあるが、イランの国民性が、硬い殻の中に柔らかい実が入っているピスタチオに似ているからだともいう。表面上の姿と心の中が違うというわけだ。イランは昔から、アラブやモンゴルなどの侵略に苦しめられ、宗教もイスラム教では少数派のシーア派を信仰してきたことから、真意を包み隠す文化が発達したといわれている。

 外見に注目してみると、格式も際立っているように思える。イランの商店に行って「これはいくらですか」と価格を尋ねると「あなたに比べたら、全然価値のないものです」と言い。代金を受け取ろうとせず、客を戸惑わせる。店主は言うまでもなく、アルバイト店員までも、値切ろうとする客に対し、少なくとも2-3回は断るそぶりを見せ、客が食い下がると、やむなく金を受け取る。

 このように口先だけのお世辞を言い、格式を整えようとする文化を、ペルシア語では「ターロフ」という。ターロフはイランに進出する外国企業が必ず熟知しなければならないことだ。笑みを浮かべて「いいね」「一度取引したい」と口にする、現地のバイヤーたちの好意的な反応を見ているだけでは、実際の成果を上げられない可能性が高い。さらにこれはビジネスだけの問題ではない。2014年、イランの核問題をめぐる交渉が真っ盛りだったころ、米国の外交官たちは「ほかの国に比べてやるべきことが多い」と話した。イランの外交官が口にすることは、どこまでが本心なのか「解読」しなければならなかったからだ。イランの社会科学者キーアン・タズバクシー氏は米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで「米国ではイエス(Yes)はイエスだが、イランではイエスがイエスにもノーになり得る。外交問題でも失敗しないためには、ターロフを理解しなければならない」とアドバイスした。

 最近、イランが経済制裁の解除によって「輝く星」になったことで、世界各国がイラン人の心をつかもうと試みている。中国の習近平国家主席は、経済制裁の解除後、世界の首脳としては初めてテヘランを訪問した。韓国は先月28日、産業通商資源部(省に相当)長官をイランに派遣したのに続き、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の訪問も検討している。「ターロフ」文化を有するイランに対し、韓国が経済的な利益だけを狙っているかのような印象を与えないよう、注意が必要だ。1979年のイスラム革命後に撤収した韓国武官のイラン駐在を再開するなど、政治的な関係の進展も同時に模索しなければならない。

 このような実務的な部分のほかに、韓国の外交官たちが苦悩しているものがあるという。朴大統領がイランを訪問する際には、現地の慣習に合わせてヒジャブ(女性の頭髪を隠す布)を着用しなければならないのかという問題だ。「女性の人権侵害の余地があるものを、あえて着用する必要があるのか」「それでも現地の文化を尊重すべきだ」「大統領とは格が違うが、欧州連合(EU)のアシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相に相当)や、イタリアのボニーノ外相なども(イラン訪問時に)例外なくヒジャブを着用した」といった意見が交わされているという。こんなときだからこそ、「イエスがノーにもなる」というイランの収監をうまく応用し、朴大統領も通常のスカーフで頭髪を隠し「ヒジャブをかぶっているわけではない」姿勢を演出するというのはどうだろうか。

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