全国180カ所に上る高速道路のサービスエリアのトイレからごみ箱(便器横に設置されているトイレットペーパー用のごみ箱)が消える。韓国道路公社が4月7日に発表した「高速道路のサービスエリアのトイレ文化革新案」の一つだ。韓国道路公社は、トイレの便器横のごみ箱をなくしてトイレットペーパーを便器に捨てるトイレ利用文化を定着させる、と明らかにした。

 韓国の公衆トイレには、トイレットペーパー用のごみ箱が設置されていて「トイレットペーパーはごみ箱に」という文句が一緒に掲示されているケースが多い。トイレットペーパーを便器に捨てれば便器が詰まると考えているためだ。トイレ文化市民連帯によると、一部の家庭でも用を足した後のトイレットペーパーを別に集めてごみとともに捨てているという。西洋では、トイレットペーパーだけではなく、便器に敷く使い捨てのシートまでも水と一緒に流すよう案内している。果たして韓国のトイレットペーパーは便器を詰まらせる主犯なのか。

 トイレットペーパーは水に100%溶けるようにできている。ペーパー類は大きく3種類に分けられる。ティッシュペーパー、ハンドタオル、そしてトイレットペーパーだ。全て同じ紙だと思われがちだが、目的によって工程と添加される物質が違う。木から抽出されたセルロースを水に溶かした後、薄く伸ばして乾かしたのがペーパー類だが、トイレットペーパーを作る際には水に溶けていたセルロースを取り出して乾燥させる。その他の物質を一切加えないため、水に入れれば自然と溶けるようになっている。

 トイレットペーパーとして製品を出荷するためには、国家技術標準院が定めた溶解性に対する基準をパスしなければならない。ビーカーにトイレットペーパーを一つ入れて600回かき混ぜ、全て溶けるまでの時間を測定するが、その時間が100秒未満でなければ製品として認可されない。トイレットペーパー製造メーカー「ユハンキンバリー」が2015年に行った実験では、同社のティッシュペーパーやハンドタオルは同じ方法で300秒がたっても水に溶けなかった。ティッシュペーパーやハンドタオルを作る際は、水に濡れても簡単に溶けないよう製造過程で湿潤紙力増強剤を入れ、水に濡れてもすぐに破れないよう強度が高められているためだ。旅行用やポータブル用のティッシュも、ティッシュペーパーとして分類される。便器にはトイレットペーパーしか入れてはならないという意味だ。

 トイレットペーパーが水によく溶けるにもかかわらず、トイレットペーパーのために便器が詰まるといった偏見は依然として残っている。化粧室文化市民連帯のピョ・ヘリョン代表は「トイレットペーパーが貴重だった1970年代には薄いカレンダーや新聞紙を代わりに使用し、これらの紙は別に集めて捨てていた。トイレットペーパーを別途に捨てる習慣はこれによって生じた」と説明する。当時は水で流す水洗式便器ではなく、ほとんどが在来式便器だったが、汚物回収業者が「紙を一緒に便器に捨てると処理が困難」とし、家庭で別に集めて燃やしたことが由来となっている。これがトイレにごみ箱が置かれるようになった背景と思われる。

 ソウル市鍾路区で10年以上、下水溝と便器の汚水管の修理を行ってきたパク・サンジョンさん(55)は「便器が詰まったから来てほしいという場合、原因の99%は異物を流したためだ。ボールペン、ストッキング、生理用ナプキン、ウエットティッシュ、たばこの吸い殻などがそうで、おもちゃのブロック、クレジットカードや財布、携帯電話が出てくることもある」と話す。パクさんは「異物のせいで便器が詰まっているのにほとんどの人はトイレットペーパーのせいで詰まったと考える」と説明する。浄化槽関連の研究を行ってきた光云大学水質環境研究室長のイ・ジャンフン教授も「トイレットペーパーのせいで便器が詰まるというのは絶対にあり得ない」と断言する。

 使用済みのトイレットペーパーを便器に捨てれば、別途に集めて処理するよりもコストが安く、環境保全にも役に立つ。2014年12月から「ごみ箱のないトイレ」を段階的に取り入れ始めたソウル都市鉄道公社は、トイレットペーパー入りのごみ箱を集めて回収するコストが下がっただけでなく、従業員たちの職業満足度も高まった、と明らかにした。ユハンキンバリー側は「トイレットペーパーは水に浸しておけばすぐにかびが生えて自然に腐る。自然の状態そのままなので環境汚染そのものがない」と話した。

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