韓国国会は昨年12月9日、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の弾劾訴追案を可決した際、セウォル号沈没事件当日のいわゆる「空白の7時間」問題を弾劾理由に含めた。朴大統領が事故当日、執務室ではなく官邸にとどまり、救助の指揮などを怠った点が国民の生命を守るという憲法上の義務に違反したというものだ。セウォル号事故当日の朴大統領の行動をめぐり、さまざまな憶測報道が相次いだことも一因だった。

■美容注射説

 朴大統領をめぐっては、事故当日の午前、しわ取りの美容整形である「フィラー」「ボトックス」の施術を受けていたか、鎮静剤プロポフォールの投与を受けていたため、事故への対応が遅れたとのうわさが流れ、関連報道も相次いだ。

 大統領の「影の医療陣」とされたキム・ヨンジェ整形外科院長が事故当日、プロポフォールを何らかの形で使用していたことが判明し、疑惑が拡大した。しかし、キム院長は「事故当日の午前9時に、患者Jにプロポフォールによる施術を行った後、ゴルフに出かけた」と説明した。セウォル号事故当日に大統領府(青瓦台)に勤務していた看護将校、チョ・ヨオク大尉も「事故当日に大統領に対する診療はなかった」と証言した。特別検事はキム院長が朴大統領にフィラー、ボトックスなどの施術を行ったことがある点は確認できたが、事故当日に施術が行われたかどうかは確認できなかったという。朴大統領は一連の疑惑を「虚偽」だと主張している。

■ヘアメイク説

 朴大統領が事故当日に外部から美容師を呼び、90分以上かけてヘアメイクをしていたため、事故対応が遅れたとの報道は一部のみ事実と判明した。大統領府は「(大統領が)中央災害対策本部訪問を控え、書面での報告を受け、約20分にわたりヘアメイクを受けた」とした上で、ヘアメイクに90分以上かけたとか、髪が乱れたように演出していたというのは事実ではないと反論した。

■シャーマン・密会説

 朴大統領が崔順実(チェ・スンシル)氏の父、崔太敏(チェ・テミン)氏の「20回忌薦度斎(追善供養)」に300人の命をささげるため、政府がセウォル号を故意に沈没させたとか、朴大統領が事故当日午前、シャーマンの儀式を行っていたとかいううわさも流れた。しかし、根拠が示されておらず、事実として確認されていない。一部には朴大統領が崔順実氏の元夫、鄭潤会(チョン・ユンフェ)氏に会っていたという疑惑も指摘されたが、事実ではないことが検察の捜査で判明した。

■後手の対応による死者増加説

 朴大統領による事故当日の対応が遅れたことで、助かるはずの檀園高校の生徒らが犠牲になったとの主張も事実関係としては根拠を欠くことが分かった。

 大統領府国家安保室は事故当日の午前8時58分、全羅南道珍島沖で起きたセウォル号事故の報告を受け、大統領に午前10時に1回目の書面報告を行ったとされる。しかし、それより30分以上前の午前9時23分の段階で既にセウォル号は50度以上船体が傾き、内部の乗客救助は科学的にも現実的にも不可能だったというのが大統領府や海洋警察の説明だ。大統領府の金奎顕(キム・ギュヒョン)外交安保首席秘書官は今月1日、憲法裁での弁論に出席し、「朴大統領に救助指揮責任を問うのは間違っている」と主張した。

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