今回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場した韓国代表が2大会連続で1次ラウンド敗退という悲惨な結果に終わったことで、ファンの間からは監督やコーチなどスタッフ陣による試合運びについて、そして選手に対しては「気合いが入っていなかった」といった、厳しい評価や非難が相次いでいる。

 自分たちの戦力がいくら不十分でも、目の前の相手に敗れ膝を屈することのつらさは試合に臨んだことのある人間なら誰もが知っている。延長までもつれこんだ第3戦で、試合を決定づける本塁打を放った金泰均(キム・テギュン)は「自分だけではなく、後輩たちも全力で準備に取り組み良い結果を残そうとしたが残念な結果に終わった」と力なく語った。今にも泣き出しそうなその表情と言葉におそらくうそはなかっただろう。

 しかし今大会の惨敗を選手のせいだけにするわけにはいかない。まず韓国の野球界全体からいつしかダイナミックさが失われていることを指摘したい。韓国野球に精通した日本のある評論家は「安全志向の試合運びが韓国プロ野球界の主流になっている」と指摘する。2009年の第2回WBC当時、日本の野球関係者は韓国が自分たちと対等に試合を繰り広げたことに驚きを隠せず「全てに満たされた日本の選手たちはじっくりとボールを追い掛けたが、韓国選手たちはミスを恐れず果敢にボールに食らいついた」と韓国のプレーを高く評価していた。

 ところがそれからわずか8年後、韓国野球に対する評価は今や正反対だ。韓国で初めてプロ野球の試合を見る人は、誰もが「コンサートに来たみたいだ」と語る。チアリーダーを中心とする整然とした声援が試合の最初から最後まで球場に鳴り響き、選手たちは実力に関係なくアイドルのようになっている。これはおそらく韓国だけの独特な応援文化なのだろう。しかし外見ばかりが派手な韓国のこの「芸能人野球」も、2006年のWBCでベスト4に進出してからは少しずつ低落傾向にある。

 リトルリーグの韓国代表が3年前に世界トップになった当時、誰もが韓国野球界の未来を楽観した。しかし優れた才能を持つ若い選手たちをじっくり育てる仕組みが韓国にはなかった。韓国の幼い選手たちはまだ成長途上にある中学生の時から大人たちと同じ野球場でボールを投げバットを振る。アマチュア指導者の多くは自分の生活が懸かった試合結果以外に関心はなく、若い選手を育てることは完全に後回しだ。

 ある野球関係者は「われわれが現役だった頃、冬の間はずっと地味なトレーニングで体づくりをしていたが、今の若い選手たちは一年中試合ばかりしているようだ」と語る。体力も技術も未熟な状態で体を酷使し、その結果けがなどの影響で早くから夢を諦める若い選手も後を絶たない。底辺がこのような現状にあるにもかかわらず、プロチームは成績や結果ばかりに執着し、わずかの選手に巨額の年俸を支払うことに全力を傾ける。このような韓国野球界の現状は、実は韓国経済とも多くの点で共通点がある。しっかりとした基盤整備を怠り、結果として成長エンジンを見いだすことができず、わずかな大企業の言いなりになって濃い霧の中をさまよう韓国経済の縮小版が今の韓国の野球界だ。

 韓国プロ野球は14日からオープン戦が始まり新たなシーズンを迎えるが、あるプロ野球関係者は「WBCでの失敗がペナントレースでの集客に影響することはないだろう」と楽観的だ。しかしこのような安易な考えが韓国野球界を不振に追い込んでいる。派手な外見の本当の中身が暴かれた時、球場から客足が遠のくのは時間の問題だ。

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