文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮のミサイル「火星14」発射直後、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)システムのうち配備されずに残っている発射台4基の配備を指示した。しかし、その後も理解に苦しむ状況は続いている。政府はTHAAD配備の助けになる事実を隠し、THAAD反対団体は電磁波被害がないという事実が明らかになったのにもかかわらず、ソウルに来て「上京デモ」を行い、軍当局は大統領の指示があった後も発射台の配備を急いでいない。

■政府は「電磁波ゼロ」の事実隠す

 国防部(省に相当)の宋永武(ソン・ヨンム)長官は31日の国会国防委員会で、「THAADレーダーに対する小規模環境影響評価を行った結果、電磁波は検出されなかった」と述べた。電磁波はTHAAD配備の中核的争点だ。「小規模環境影響評価で電磁波がまったく観測されなかったと聞いた」という野党「自由韓国党」金学容(キム・ハクヨン)議員の質問に、宋長官は「非常に正確な指摘で、その通りだ」と答えた。宋長官はさらに、「海軍将校として、イージスシステム事業を行った1人として申し上げると、イージス艦に搭載されているSPY-1Dレーダーの出力の方がTHAADレーダーより62倍強い。そのように強くても約150メートルの艦上で将兵250人が勤務している」と述べた。

 だが、国防部はこうした事実を明らかにしていなかった。金議員が「なぜ公表しなかったのか」と聞くと、宋長官は「環境部との協議事項は秘密事項だ」と答えた。また、金議員が「(電磁波未検出という事実を)なぜ大統領に報告しなかったのか。早速報告すべきだ」と言うと、宋長官は「そのようにする」と答えた。議員らは「THAAD配備の助けになることを『秘密』にしておくことも、大統領に報告していないことも理解に苦しむ」と話している。与党「共に民主党」李哲煕(イ・チョルヒ)議員が「今回の臨時配備は『やってみて、だめなら元に戻すこともあり得る」という条件付き配備ではないか』」と質問すると、宋長官は「明言するが、そうではない」と答えた。

■デモ隊は大統領府へ

 政府の環境評価の結果、電磁波の問題はないことが確認されたものの、THAADに反対するデモ隊は上京して大統領府前に集まった。31日昼12時ごろ、大統領府から約100メートル離れたソウル市鍾路区孝子洞の治安センターの前にはレインコートを着た約50人が集まり、THAAD配備反対を叫んだ。デモ隊は対政府抗議記者会見やデモをするためバスに乗ってソウルにやって来た。「THAAD配備撤回星州闘争委員会」所属のある住民は「文大統領に投票したら不意打ちを食らった。当選したらTHAADを撤回すべきではないのか」と言った。慶尚北道星州郡の住民からなるTHAAD配備撤回星州闘争委員会だけでなく、THAAD配備反対金泉市民対策委員会、THAAD配備反対大邱慶北対策委員会、円仏教星州聖地守護非常対策委員会、全国民主労働組合総連盟(民主労総)、民主主義自主統一大学生協議会などが参加した。デモ隊は同日午後2時にはソウル市竜山区の国防部正門前で政府糾弾デモを続けた。約60人が集まった国防部前でのデモでは、労働運動系団体関係者の演説もあった。民主労総のチェ・ジョンジン委員長職務代行は「韓米軍事演習も中止すべきだ」と主張した。アジア共同行動(AWC)のホ・ヨング韓国委員会代表は「恐ろしい帝国主義戦争が韓半島(朝鮮半島)で行われる危険性が高い。これが文在寅の軍事外交戦略ならば、ろうそくデモではダメだ。たいまつでも手に持たなければ」と言った。糾弾演説の合間には、デモ参加者から「文在寅は悪人!」「頭がおかしくなったからああいうことをしているんだ!」などの声が上がった。

■星州は出入りできるのに軍当局は発射台設置せず

 一方、デモ隊の上京で星州ゴルフ場への出入りがいつでも可能になったのに、軍当局は発射台を移動・配備していない。国防部は同日、「米国側と協議を開始した」とだけコメントした。国防部の文尚均(ムン・サンギュン)報道官は「残りの発射台を追加配備するための正式協議がまもなく米国側と行われるだろう。協議が完了し次第、臨時配備のための準備を経て配備が行われる予定だ」と述べた。報道陣が「前回のように一晩でゲリラ的に配備を進める可能性もあるのか」と質問すると、文報道官は「それはない。透明性のある手続きを経て行おうと今、準備しているところだ」と答えた。時間がかかる理由について、大統領府関係者は記者会見で、「配備するにはゴルフ場内に(発射台を載せる野戦用)パッドが必要だ。実務的な作業を行わなければならない」と説明した。

 しかし、発射台は車で簡単に移動でき、現在は星州に近い漆谷米軍基地にあるので、決心さえすれば約1時間で移動可能だ。このため、野党議員の間からは「デモ隊がいない間にひとまずゴルフ場内に発射台を移し、パッド工事はその後にすべきではないか」との指摘も出ている。

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