韓国経済の難題の一つは、人口14億人の中国での「生き残り」だ。一部には中国が1980年代の日本のように不動産・金融バブルの崩壊で危機に陥るとの見方もあるが、実態は異なる。一例として、今年と来年の経済成長率をめぐっては、「米国は期待以下だが、中国は予想よりも好調だ」として、中国楽観論を唱える専門家が多い。最近発表された世界のインターネット企業時価総額上位20社を見ても、米国(13社)と中国(7社)と両大国が占めた。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は先月、「今後10年以内にIMF本部をワシントンではなく、北京に置く可能性がある」と公式の場で発言した。

 そんな中国から韓国企業が次々と追い出されている。スマートフォン世界1位のサムスン電子は、4-6月期に中国市場でのシェアが3%まで落ち込み、8位まで順位を落とした。現代・起亜自動車による中国での販売台数は1年で半分となり、販売台数10位圏外に転落した。「中国撤退命令」を出す韓国の流通、通販、衣料品企業が続出しており、韓国の対中輸出は3年連続のマイナスとなった。

 問題はこうした現象が両国間の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)をめぐる対立による一過性のものではなく、さらに長期化し、問題が深刻化しそうな点だ。韓国の輸出全体の4分の1を占め、世界最大の市場である中国を無策のままであきらめることはできない。韓国が中国にいかに対し、いかに活用するかによって、韓国全体の存亡が決まる分かれ道にある。

 中国を再び「チャンスの土地」にするためには、中国に対する認識を冷静に変える必要がある。THAAD配備決定から1年以上、中国は韓国を米国の対中封鎖基地と考え、韓国にはもはや善良な隣国ではなく、残酷な報復をいとわない脅しの国だという素顔をまざまざと見せ付けた。大統領特使、外交部の長官、次官らとの会談で、中国は「THAAD配備を撤回しない限り、両国関係を正常化することはできない」とする自国中心の論理から一歩も譲歩せずにいる。

 こうした状況で政府と企業、国民は、韓中国交正常化25年を迎える今年、両国関係の「ニューノーマル(新たな現実)」が始まったことを直視する必要がある。中国に頼って容易にカネを稼ぐことができた時代は終わったことを認め、行き過ぎた対中依存からの脱却に取り組むべきだ。独島(日本名・竹島)と慰安婦問題で衝突する韓日関係のように韓中関係も緊張が避けられないだけに、中国に対しても原則を持ち、堂々と臨む姿勢が欠かせない。

 中国に対する研究・分析と攻略レベルの高める必要がある。地理的に中国と最も近く、中国による影響を大きく受ける韓国だが、中国に関する研究能力は全く不足しており、攻略もどんぶり勘定に近かった。政府官庁、企業、団体ごとに「中国最高責任者(CCO·Chief China Officer)を決め、中国の各省、各都市の事情に精通した専門家を養成する必要がある。韓国の96倍の領土に28倍の人口を抱える中国では、省・市ごとの攻略法を取ることが有利だからだ。そうした専門家を総人口(5000万人)の0.02%の1万人程度は最低限確保し、中国とは差別化された製品、サービス、マーケティングで勝負してはどうだろうか。

 中国に代わる可能性があるインド、東南アジア、中東への投資、進出を増やし、米国との同盟を強化することも必須だ。韓国の背後に米国が控える場合と米国なしで韓国が単独でいる場合では、中国の韓国に対する態度にも天と地の差があるのが現実だ。

 もう一つ強力な武器は起業家精神の復活だ。中国を圧倒する新製品をつくり出すため、研究開発に全力投球し、中国各地に切り込む企業経営者の野性的なチャレンジと熱情がそれを支えなければ、あらゆる努力は無駄になりかねない。そうした意味で公務員の雇用創出に税金をつぎ込み、大企業のあら探しを助長するかのような最近の政策は韓国の対中競争力まで損ねる自害行為と言えそうだ。

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