文在寅(ムン・ジェイン)大統領とトランプ米大統領は8日午前、南北軍事境界線のある板門店の非武装地帯(DMZ)を予告なしに訪問しようとしたが、気象条件の悪化により断念した。濃霧に加え、中国発の黄砂という悪条件が重なり、視界不良でヘリコプターの着陸が困難となったからだ。

 両首脳はこの日、それぞれ青瓦台(韓国大統領府)と米軍の竜山基地(ソウル)からヘリコプターでDMZに向かった。文大統領のヘリコプターは午前7時1分、トランプ大統領のヘリコプターは同7時43分に離陸。両首脳は板門店の共同警備区域(JSA)警備大隊が駐屯するキャンプ・ボニファス内に着陸した後、軍事境界線(MDL)に最も近い(25メートル)哨所を一緒に視察する予定だった。

 しかし気象状況が悪化。韓国気象庁によると、この日午前は霧と黄砂の影響で微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が急上昇し、板門店付近の視界は午前8時の時点で0.87キロメートルまで悪化した。

 文大統領は予定の場所より手前に着陸し、車に乗り換えてDMZを目指した。だがトランプ大統領は、側近らの勧めで着陸から5分で引き返した。その後トランプ大統領は竜山基地で待機し、文大統領に10分ごとにDMZ訪問の意思を伝えたが、結局午前9時にDMZ訪問を諦めてホテルに戻った。文大統領も午前9時3分にDMZを出発し、青瓦台に戻った。

 両首脳による「DMZ電撃訪問」は事前には公表されておらず、DMZ行きを決めた経緯については韓米の説明が食い違っている。韓国側は、文大統領が前日の首脳会談の際にトランプ大統領にDMZ訪問を提案し「私も同行する」と伝えたところ、トランプ大統領が「一緒に行ってくれるなら私も行く」と応じ、訪問が決まったとしている。一方、ホワイトハウスのサンダース報道官は「(アジア歴訪が始まる)かなり前から予定されていた」と説明した。青瓦台の朴洙賢(パク・スヒョン)報道官は「結局戻ることにはなったが、10分ごとに訪問の意向を文大統領に伝えていたトランプ大統領の意志は、堅固な韓米同盟と平和守護に対する強いメッセージとして遜色(そんしょく)ないものだ」と述べた。

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