エンジョ・ペラ(19)は、パリ第7大学韓国学科で学ぶ学生だ。高校を早期卒業したエンジョは、もともとソルボンヌ大学に入学した。歴史について学んでいたところ、偶然にも韓国の独立運動史に接することになった。束縛の歴史に目を通しているうちに、知的好奇心が爆発。韓国の政治や経済までも深く勉強するため、学校を変えた。

 ベンザメン・ベルトチ(23)は、フランス知性の産室であるパリ高等師範学校に通う。パンソリ(物語に節を付けた語り物音楽)が胸に響いたというベンザメンは、1年間交換留学生としてソウルでパンソリを学んだ。名唱ソン・スンソプ先生と共に撮った写真をメッセンジャーアプリ「カカオトーク」のプロフィルにアップしている。

 二人は韓国が好きな青年のうち、非常に珍しいケースだ。韓国については大多数のヨーロッパの若者たちがKポップにだけ熱中しているためだ。韓国の大衆音楽にすっかりはまった学生たちが寄り集まったことで、フランスの大学の韓国学科入学の際の競争率は10倍を上回る。パリに韓国ダンスグループの振り付けを教える塾まで登場した。

 最近記者と面会したエンジョとベンザメンは「韓国は多くの魅力を持った国なのに、Kポップしか知られていなくて非常に残念」と話す。韓国を惜しむ他のフランス人も「Jポップ(日本の大衆音楽)が没落したという点に注目する必要がある」と忠告する。一時、多くのフランス人たちは日本文化に沸き返ったが、今はその熱気が消滅した。今年4月にフランスのJポップ専用ケーブルテレビ「ノーライフ」は経営難により閉局した。

 もちろんKポップの競争力は、過去のJポップに比べてはるかに高い。防弾少年団(BTS)がビルボードチャートで1位にのし上がるほど多くの底力を発揮している。しかし、これからは韓国をアピールするメニューを多様化させるために努力を傾けるべきだろう。Kポップが引き続きリードしても、その後を支える他の魅力がなければならない。いつの日かKポップの人気が下降気味になったときに備えるためにも「偏食」から脱するべきなのだ。

 昨年韓国を訪問した外国人観光客が前年に比べて23%減少したというのは、尋常とは言えない兆しだ。この全ての理由を「韓中関係が悪化したため」と決め込むのは正しくない。西側諸国から韓国を訪れる観光客たちも、平年並みか減少した。国家広報戦略がどこか故障している証拠だ。

 高い競争率を勝ち抜いてフランスの大学の韓国学科に入学した学生のうち、2、3年生の時に他の学科に移るケースが最近続出している。Kポップ以外に韓国に引き続き魅力を感じられる要素が足りず、韓国専門家として未来が不透明だからだという。Kポップだけで積み上げたイメージでは、中身が弱いのだ。

 パリで芸術分野に携わり20年以上も生活している同胞は「Kポップの高い人気に酔いしれているのか、韓国政府が第2、第3の韓流を育てるのに日に日に怠慢になっている」と話す。耳を傾け、心に留めておくべき指摘だと思う。

パリ=孫振碩(ソン・ジンソク)特派員

ホーム TOP