地方から仁川国際空港まで1本で行ける仁川空港行きの韓国高速鉄道(以下、仁川空港KTX)が開通から4年で廃止されることになった。仁川空港KTXは2014年6月に開通、一日に京釜線12回、湖南線4回、慶全線・東海線・全羅線各2回の合計一日22回、仁川空港を行き来していた。ところが昨年、ソウル駅から仁川空港駅まで仁川空港KTXを利用した乗客は一日平均3433人に過ぎなかった。全座席数が1万4970席なので77%が空席だったことになる。誰がどのような理由で同事業を推進したのだろうか。

■平昌五輪後すぐに廃止手続き

 仁川空港KTXは2010年、鄭鍾煥(チョン・ジョンファン)国土海洋部(省に相当)長官時代に、「KTXに仁川空港とつなぎ、鉄道運営を効率化する」として推進された事業だ。同部の洪淳晩(ホン・スンマン)交通政策室長=当時=が主導した。ところが、韓国政府系シンクタンク・韓国開発研究院(KDI)の予備妥当性調査では費用便益比(B/C)が0.93と評価が低かった。B/Cが1未満というのは投資した費用に見合った利益が出ないという意味だ。事業進行が妥当かどうかを問う総合評価(AHP)指標は0.502で、最低基準(0.5)をかろうじて上回る程度だった。KDIは当時、「経済的妥当性がやや不十分なので、事業を施行するかどうか慎重に判断しなければならない」としていた。

 それにもかかわらず、国土海洋部は総事業費3000億ウォン(約300億円)以上かかるこの事業をゴリ押しした。KTX路線が唯一なかった仁川市も同事業を積極的に支持した。劉正福(ユ・ジョンボク)仁川市長=当時=は「仁川発KTX事業は私の最大の公約だ。仁川市民の交通利便性のため絶対必要だ」と主張した。11年6月に着工、新京義線(京畿道・ムンサン-ソウル・竜山)と仁川空港鉄道をつなぐ水色連結線(2.2キロメートル)を新たに作り、空港鉄道路線を高速鉄道が通れるよう、既存の線路を改良する作業などに3031億ウォン(約304億円)が投じられた。

 だが、実際にふたを開けてみると、料金が高くて時間もかかる「厄介者」になった。釜山駅からKTX路線に沿って仁川空港まで行けば7万2100ウォン(約7200円)かかるが、釜山駅からKTXでソウル駅まで行き、そこから空港鉄道に乗り換えれば6万7300ウォン(約6750円)で済む。ソウル駅から仁川空港駅までKTXでは約50分だが、空港鉄道を使えば直通で43分だ。このため当然、仁川空港KTXは座席の77%が空席となった。

 それでも、平昌冬季五輪開催時は仁川空港から江原道江陵に直接行ける大量の交通手段が必要だという理由で路線がそのまま維持された。16年5月に韓国鉄道公社(KORAIL)社長に就任した洪淳晩氏(17年8月まで)は「(仁川空港KTXは)平昌冬季五輪時に選手団や観客を輸送する最も速くて安全な手段だ」と述べた。

■国際空港と高速鉄道に相乗効果なし

 しかし、今年2月の平昌五輪期間に江陵線を運行するため暫定的に運行中止された仁川空港KTXは、五輪が終わっても再開されなかった。KORAILが高速鉄道の車両整備などを理由に運行中止を継続、6月には完全運行中止を申請したためだ。ある交通専門家は「以前と交通状況が変わったのは確かだが、需要予測が大幅に外れていたのは事実だ。国土海洋部も埋没費用(サンクコスト)に頭を痛め、最終的には現実を受け入れた」と語った。

 仁川空港KTXには国際空港と高速鉄道の相乗効果を試すという意味もあったが、結局は失敗に終わった。「空港と高速鉄道は事実上の代替財関係にあるため、相乗効果を生み出すのは難しい」という専門家たちの予想が事実として証明された形だ。こうしたケースは海外でも成功事例がないという。フランスではリヨン空港に高速鉄道TGVをつなぐという試みがあったが、空港に移動するTGV利用者がほとんどいかかったため、代表的な失敗事例となった。このため、韓国南西部の務安空港KTX経由案も見直すべきだという声が上がっている。

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