保健社会研究院、大統領府首席秘書官の指示で1万人対象にネット調査

 韓国の妊娠可能な年齢の女性(15歳-44歳)の4人中3人(75.4%)が人工妊娠中絶を合法化すべきだと考えていることが分かった。韓国保健社会研究院が昨年9月から10月まで、全国の該当年齢の女性1万人を対象にインターネット調査した結果だ。

 韓国政府は2005年と11年にも中絶実態調査を実施したが、今回は最大規模だ。質問が異なるため単純比較は難しいが、女性の行動も価値観も過去の調査結果とは大きく違っていた。

■中絶する人が変わった

 8年前の調査では、法的夫婦と同居カップルを合わせた「既婚女性」(57%)が未婚女性(43%)よりも中絶を多くしていた。年齢別では30-34歳の女性(23%)が、学歴別では高卒以下(49%)が多かった。

 ところが、今回の調査では未婚女性(47%)が増え、既婚女性(51%)が減少した。また、大卒者(67%)の方が高卒以下(20%)や大学院以上(13%)よりも、都市部(86.2%)の方が農村部よりも中絶を多くしていた。年齢別では25-29歳の女性(30%)が最も多かった。妊娠中絶の理由は「学業・仕事などの社会活動に支障があると思ったから」(33.4%)という回答が最も多かった。

 中絶件数の減少傾向も顕著だった。人工妊娠中絶率(人口1000人当たりの妊娠中絶件数)は05年の30%から11年は16%、今年は5%に下がった。年間の人工妊娠中絶件数も34万件から17万件、そして5万件へと急減している。

 同研究院のイ・ソヨン研究員は「避妊実践率と緊急(事後)避妊薬の処方件数が増加していることや、15-44歳の女性の人口が減少していることが影響しているようだ」と話す。

■現実を正確に反映?

 しかし、専門家らは年間中絶件数が5万件という今回の調査結果に疑問を抱いている。保健福祉部(省に相当)はこれまで年間中絶件数を17万件と推定してきたが、医療関係者は「それはあまりにも少ない数値だ」と反論している。17年に延世大学・培材大学研究チームがビッグデータを分析し、年間中絶件数を最大50万件と推定した。

 大韓産婦人科医師会のキム・ドンソク会長は「これまでの調査には高麗大学・延世大学の研究チームとその大学病院がそれぞれ参加したが、今回の調査では一般人のネット上の回答のみに頼っている」と指摘した。ホ・ミンスク国会立法調査官は「ネットの匿名調査とは言え、ありのままの事実を明らかにするのをためらった女性が多いだろう」と語った。

■大統領府民情首席秘書官はどう応える?

 韓国の母子保健法は、性的暴行での妊娠、親の遺伝子疾患、母親の生命に危険がある場合などを除いて中絶を許可していない。「胎児の生命権を尊重せよ」という宗教界の主張も強い。カトリック・ソウル大教区生命委員会のチョン・ジェオ神父は「女性が自分の人生で子どもを育てられる環境を整えることが重要であって、中絶が答えではないと思う」と語った。

 これに対して女性団体や一部学者たちは「女性の選択が最優先されるべきだ」と反発している。高麗大学社会学科のファン・ミョンス教授は「女性の自己決定権を尊重しなければならない」と語った。

 今回の調査は、17年11月に大統領府に対して堕胎罪廃止請願(23万5372人)が提出され、大統領府のチョ国(チョ・グク)民情首席秘書官が「実態調査を通じて現状と事情を把握したい」と述べたことから行われた。だが、チョ国首席秘書官は同日、何もコメントしなかった。

 保健福祉部はひとまず憲法裁判所の判決を待つとしている。憲法裁判所は12年に中絶処罰が合憲だと判断している。しかし、17年に違法中絶で起訴された産婦人科医が再び憲法訴願を出し、現在審理が行われているところで、最終的な結果は来月末、出る可能性が高い。同部のイ・ガンホ人口児童政策官は「調査結果を政策にどのように反映させるかは、その後の話だ」と語った。

ホーム TOP