ローマ帝国第3代皇帝カリグラの治世は大歓声で始まった。先代ティベリウス帝の世に国の財政は健全化し、周辺に脅威となるような敵もなく平和が続いていた。2億7000万セステルティウス(古代ローマの銀貨)という巨額の遺産も相続した。ローマ帝国全兵士の2年分の給与に相当する莫大(ばくだい)な額だ。即位後、最初に行ったのは市民と兵士に巨額の現金を分け与えることだった。それから7カ月にわたり剣闘士の試合、戦車競走、演劇公演などを昼も夜も行った。市民はカリグラを称賛し、町はお祭り騒ぎだった。

 カリグラはエジプトから巨大石造オベリスクを運んで戦車競技場の中央に置いた。数百隻の船を停泊させ海上に5.4キロの道を作り、黄金の戦車に乗って海の上を走るショーも行った。ローマで発生した大規模火災の被害も国が補償した。影響で皇帝の資産も国庫もわずか3年で底を突いた。財政難に追い込まれたカリグラは相続制や燃料税、裁判税などを次々と引き上げ、王宮の財産まで売却した。元老院に対しては「国家反逆罪」などの罪を着せ財産を没収した。その結果、貴族も市民もカリグラから背を向け、わずか3年10カ月でその治世は終わった。

 スペイン無敵艦隊を築いたフェリペ2世は軍備の拡張などに天文学的な資金をつぎ込んだ。フェリペ2世は巨額の支出による財政赤字を銀行からの借金で埋め合わせた。アメリカ大陸から持ち込んだ銀だけで借金が返せなくなると、未来に予想される国の収入まで担保とした。金利は最大で20%にまで上昇した。王の支出を制限することで財政が比較的健全だった英国向けの4倍の金利だ。さらに商工業に対する税金を引き上げたことで産業はさらに萎縮した。最終的に「国家破産」を4回も宣言し、欧州の資本は英国に集まった。1588年に無敵艦隊が英国に敗れたのは、単なる軍事的な戦術面での失敗だけではなかった。財政破綻の残酷な結果だった。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権はすでに500兆ウォン(約50兆円)を上回る巨額の予算を組んでいる。予算は毎年平均35兆ウォン(約3兆5000億円)のペースで急激に増加している。これに加えて数兆ウォン(数千億円)規模の補正予算も3回組まれた。国の借金は1700兆ウォン(約170兆円)に達しているが、それでも政府は使うことしか考えていない。選挙を前に突然2兆ウォン(約2000億円)以上の高校無償化を発表し、今後も48兆ウォン(約4兆8000億円)をつぎ込んで全国に「生活SOC(社会間接資本)」を建設するという。事前調査なしに24兆ウォン(約2兆4000億円)に上る地域事業を推進し、さらに特別市・広域市・特別自治市・道に対しては各地の開発事業に総額134兆ウォン(約13兆円)を支援する約束を行った。

 雇用対策にはすでに70兆ウォン(約7兆円)の予算がつぎ込まれたが、民間の雇用は逆に減った。「文在寅ケア」によって健康保険財政はマイナスが膨らみ、国民年金や基礎年金には毎年15兆ウォン(約1兆5000億円)が今後さらに投入されるという。それでも将来、予算を雇用対策や福祉に投入するなどと聞こえがいいことばかり宣伝している。

 先日大統領府の関係者に取材したところ「政府による予算の投入はもっと必要だ」と語っていた。与党・共に民主党所属の国会企画財政委員長は「国民の空になった財布は国が満たさねばならない」と述べた。しかし今政府が気前よく使っている国の金は国民が出したものだ。効果もはっきりしない選挙用の政策宣伝のために浪費してよいものではない。国の金庫は使うのはたやすいがためるのは難しい。政府も与党も金の恐ろしさを知るべきだ。ある与党議員は「政権幹部の多くが自分で金を稼いだことがない」と語る。選挙ばかりを考えて国の金を使うことしか頭にないようでは、ローマ皇帝やスペイン無敵艦隊が陥った破綻の泥沼に間違いなく直面するだろう。

政治部=ペ・ソンギュ部長

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