韓国政府が短期的な景気浮揚のための財政出動政策を繰り返せば、国家財政に大きな負担となり、経済成長率低下という構造的問題も解決できないという国策シンクタンクの見方が示された。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は16日に開かれた「2019年国家財政戦略会議」で、「世界的な金融危機以降、韓国は国家財政を満たすことに重点を置いてきたが、現在の状況は低成長、二極化、雇用(低迷)、少子高齢化など韓国社会の構造的問題の解決が急務だ」と述べた上で、「財政の思い切った役割がいつよりもまして求められている」と強調した。ところが、国策シンクタンクが提示したのは、全く異なる方向の意見だった。

■財政出動では構造的問題解決できない

 文大統領は同日の会議で、「財政は韓国社会の中長期の構造改善だけでなく、短期の景気対策にも役割を果たすべきだ」と述べた。しかし、韓国開発研究院(KDI)は「世界的金融危機以降の韓国経済の成長率鈍化と長期見通し」と題するリポートで、「成長鈍化に対処するための拡張的財政政策は長期的な方策にはならず、むしろ相当の副作用が発生するリスクがある」と警告した。

 リポートを執筆したクォン・ギュホ研究委員は「政府が支出を増やし、需要を支えるやり方は短期的には効果があるかもしれないが、構造的な変化を引き出すことができる政策ではない」と批判した。現在の成長鈍化は構造的な要因によるものであり、短期的な処方である財政拡大では解決が難しいという趣旨だ。クォン研究委員は「政府が成長率鈍化の原因を混同し、誤った処方を提示すれば、かなりのコストを支払わなければならないリスクがある。短期の景気浮揚を目的として、拡張的財政政策を長期間繰り返せば、中長期的に財政に大きな負担となりかねない」とも指摘した。

 KDIは成長率を高めるための方策として、自由な経済活動を支える構造改革と技術革新を続けるべきだと提言。そうした努力によって、成長率に対する全要素生産性の寄与度を1.2ポイントまで高めなければ、2020年代に現在と同水準の2%台半ばの成長率を維持できないと予想した。全要素生産性は一国の全般的な技術、教育水準、社会制度の効率性などが生産にどれだけ寄与しているかを示す指標だ。クォン研究委員は「韓国は金融、労働、企業活動規制など制度的な側面でまだ生産性を向上できる余地がある。たゆまぬ革新と自由な経済活動に有利な制度的環境を整えるための努力を続けるべきだ」と訴えた。

■生産性改善しなければ、1%台成長に転落

 KDIは成長率が低下する基本的な理由も政府の財政支出が足りないからではなく、古い経済システムで生産性が低下したためだと結論づけた。過去30年間の成長率を分析すると、韓国の実質経済成長率は1990年代に7%、2000年代に4.4%、2010年代に3%と徐々に低下したが、同じ期間に全要素生産性の寄与度は2%、1.6%、0.7%と低下した。全要素生産性の寄与度低下は、経済システム全般の効率性がますます低下していることを意味するが、そうした生産性の低下が経済成長鈍化の主因だとの見方だ。KDIはそれを土台として、最近の韓国の経済成長率鈍化が世界的な金融危機以降の海外の需要低迷という一時的な景気要因によるものではなく、制度や企業環境など構造的要因によるものだととらえた。リポートは生産性が向上せず、現在の水準にとどまると仮定した場合、2020年代(20-29年)の年平均経済成長率は1.7%まで低下すると試算した。

 労働市場の柔軟性を高め、構造改革に積極的に取り組むべきとの指摘は、KDIだけでなく、経済協力開発機構(OECD)や国際通貨基金(IMF)などの国際機関からも示されている。しかし、文在寅政権はそうした制度改革を軽視する一方、財政支出を増やすことに没頭していると言われている。檀国大の金兌基(キム・テギ)教授は「財政拡大で経済成長の低下を防ぐことができないことは、予算規模を拡大してもマイナス成長となった1-3月期の経済成長率で既に証明済みだ。KDIの指摘通り、硬直的な労働市場の改革など構造的な革新に取り組まず、財政だけを拡張するのは、底が抜けたかめに水を注ぐようなものだ」と指摘した。

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