韓国国防部も答弁で「最終版ではない」と認める

 韓国大統領府が昨年7月に公表した67ページに及ぶいわゆる「機務司(機務司令部、かつての軍情報部隊)戒厳令文書」に添付された資料が最終版ではなく、複数の資料を寄せ集めた中間報告用(草本)だったことが23日までに分かった。韓国国防部(省に相当)は先日、元機務司要員のある軍務員が「元の所属部隊に復帰するよう命じた当時の措置は不当」として、韓国国防部の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)長官を訴えた裁判での答弁書の中で「大統領府がブリーフィングを行った資料は最終版ではない」と明らかにした。最終版ではこれまで大きな問題とされてきた「戒厳令に向けた国会統制」に関する内容は記載されていなかったという。

 大統領府は当時「戒厳令に向けた計画の具体的な資料」としてこの文書を公表し、これを根拠に「戒厳令文書に対する捜査が必要」と主張していた。大統領府は「文書の重要性と国民の関心の高さを考えると、国民に向けて迅速に公表するのが道理と考える」とした上で「大統領府は文書の違法性、そして実行計画があったかどうか、さらには配布された部署などについて、国防部特殊チームが法律と原則に基づいて捜査を行うことを期待している」とコメントした。しかしこれについては当時、最終版ではない報告用の文書を大統領府が「戒厳令準備用」などと拡大解釈したとの指摘が相次いでいる。

 軍務員は訴状の中で「原告は、大統領府の金宜謙(キム・ウィギョム)報道官が戒厳令関連ブリーフィングを行ったときに(戒厳令文書の)本文(8ページ)と参考資料(67ページ)を初めて見た」「あれほど大量の文書が作成されたのか、と思った」などと説明した。軍務員はさらに「本文を作成した主な担当者は、ブリーフィングされた資料が最終版ではないと明言した」「特別捜査チームによる捜査が終わった際、最終担当者たちから『メディアにブリーフィングされた資料は長官に報告する最終版ではない』という話を聞いた」「最終版には『国会統制』という部分はなかったと(担当者らが)明らかにしていた」などとも主張している。

 大統領府の金宜謙・元報道官は当時67ページの資料を公表した際「戒厳令を成功させるためには、セキュリティーが維持された状態で、迅速に(戒厳令を)宣布し、戒厳軍が通過する経路を掌握するなど、事前の準備がうまくいくかどうかが鍵になる」と記載されていたと主張し「戒厳令解除の評決を阻止するため、国会での議決に与党(自由韓国党)議員が参加しないようにし、国会議員を現行法で処罰することで議決に必要な定足数を満たさないという計画もあった」と強調していた。

 これに対してある韓国軍関係者は「大統領府が発表した67ページの資料は、数十年前の戒厳令をはじめとして、さまざまな内容を寄せ集めた草本だった」「この資料に基づき、現状に合わせて多くの部分を省き、国会の統制といった部分も除かれた」と説明した。

 国防部は答弁書の中で「原告(軍務員)が直接作成した文書が大統領のブリーフィング内容に含まれていなかったとしても、これはあくまで結果的な側面だ」「原告(軍務員)の主張通り大統領府からメディアにブリーフィングされた資料は最終版でもない」と説明した。軍務員については「戒厳令文書に関与したというだけで人事が可能」と強調しながら「大統領府のブリーフィングは最終版でない」という事実を明確にした形だ。上記の韓国軍関係者は「国防部の答弁書と元機務司要員の訴状に記録された内容が正しければ、大統領府はずさんな中間本に基づいてメディアにブリーフィングを行ったことになる」と指摘した。

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