韓国政界では1日、米朝首脳会談に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が同席できなかったことを巡って「韓国疎外論」が持ち上がった。だが文大統領と韓国大統領府(青瓦台)は、こうした批判を全く意に介さない雰囲気だ。ハノイ会談決裂後、米朝会談再開のため総力を挙げてきた文大統領としては、今回の「6・30板門店会談」で突破口を得られたので、本人が米朝会談に同席できなかったとしても全く問題はないのだ。

 与党側では「文大統領らしいスタイルが今回の会談実現の過程でも如実に表れた」という評価がなされている。文大統領は、自分が立てた目標を達成するためならば周囲の批判や苦言、屈辱的状況は意に介さず、粘り強く推し進めてきたという。文大統領は今回訪韓したトランプ大統領の気を引くため、徹底してトランプ路線にコード(理念・傾向)を合わせた。北欧歴訪時には「北朝鮮は完全な核廃棄の意思を実質的に示すべき」と発言して米国側の立場を取った。「制裁緩和」にも言及しなかった。6・25(朝鮮戦争)についても、北朝鮮の侵略だとして米軍の犠牲を強調した。

 昨年下半期に南北経済協力を推進した際、韓国大統領府の中心的ブレーンは文大統領に「米国が制裁違反を問題にしているが、自主権侵害にきちんと抗議しよう」と建議した。だが文大統領は「そんなに悔しかったら、米国の人間として生まれればよかったのに」と制止したという。このブレーンは「文大統領は本当に怖いという思いすら抱いた」と語った。2017年に北朝鮮がミサイル挑発を行った際、文大統領が北朝鮮を批判すると、与党サイドの陣営から「失望した」という批判が出た。当時、文大統領の中心的ブレーンだった金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道知事は、「文大統領が米国の股をくぐっている」というコメントにリンクを張り「文大統領がなぜあのように振る舞ったか、もう一度考えてほしい」と書き込んだ。

 今回の米朝会談と関連して、野党「正しい未来党」の孫鶴圭(ソン・ハッキュ)代表は1日、「韓国領内で行われた会談で、韓国大統領は役割も存在もなかった」と指摘した。自らバイプレーヤーと任じてはいたが、かつての「通米対南」の再現だという懸念もあった。これに対し、タク・ヒョンミン元大統領府行政官は「自分の自尊心や名誉より国家的価値と利益のため骨折る姿…気の毒で、申し訳ない」とコメントした。

 北朝鮮は最近「差し出がましい仲裁者のふりはやめろ」「寝言じみたたわごと」「背信行為」と相次いで文大統領を批判した。だが文大統領は「時期や場所にこだわらない」と、南北首脳会談を要求し続けた。

 目標を立てたら批判や苦言にも揺るがないのは、国内問題でも同様だ。文大統領は、企業・自営業者・専門家が変更を要求し続けている所得主導成長や脱原発政策、野党との協治についても「補完はあっても修正はない」という立場を曲げていない。文大統領は、先月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議でも所得主導成長を国際的にアピールした。2016年の総選挙では、党内の強い反発にもかかわらず金鍾仁(キム・ジョンイン)元議員を三顧の礼で非常対策委員長に迎え入れた。

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