▲イラスト=イ・チョルウォン

 今月8日の午前1時半(現地時間)ごろ、イタリア・ベネチアのある公園で韓国人観光客7人が飲料やシャンパンを分け合って飲んでいた。そこにホームレスとみられる外国人女性が近づいた。女性はイタリア語で話しかけ、一行に手を差し出した。Kさん(25)が英語で「申し訳ないが、お金はないから立ち去ってほしい」と答えた。すると、女性は怒って、痴漢撃退用のスプレーを取り出し、一行に向かって噴射した。スプレーが目に入ったKさんは悲鳴を上げ、Yさん(25・女)ら仲間にもスプレーがかかった。

 騒ぎを受け、現地警察2人が出動した。Yさんらは警察に英語で「女性がスプレーをまいたので市選べてほしい」と告げた。しかし、警察は痛みを訴えるKさんの様子をまねしながら笑ったという。2人を偽警官だと思ったYさんは韓国にいる家族と映像通話し、助けを求めた。しかし、警察はYさんから電話を押収し、こん棒で攻撃してきた。午前2時10分ごろに警察官4人がさらに到着し、KさんとYさんに身分証の提示を求めた。2人は「大使館に連絡するまで提示できない」と拒んだ。午前2時半ごろに警察署に連行された2人は、取り調べを受けた後、午前6時半ごろに解放された。

 ここまでがKさんら韓国人一行の主張だ。KさんとYさんは公務執行妨害などの疑いで立件され、起訴相当で書類送検された。これに対抗し、KさんとYさんは「イタリア警察から人種差別と殴打を受けた」と主張したことから、韓国外交部が真相調査に着手した。

 ベネチア警察は韓国人観光客の主張が事実とは異なるとの立場だ。外交部関係者は「ベネチア警察は韓国人が公務執行を妨害し、適法な手順い沿って物理的な力を行使したと主張している」と明かした。

 KさんとYさんのように、海外旅行中に強盗や窃盗、事故などに遭う事例は増えている。しかし、旅行客が現地で被害の救済を受ける方法は整っておらず、対策が求められている。外交部によると、2017年に海外で韓国人の事件・事故被害者は1万2529人に達する。14年には5952人だった。3年で2倍以上に増えたことになる。窃盗被害者が9813人で大半だったが、強盗(185人)、性的暴行・わいせつ行為(118人)、殺人(7人)など悪質な犯罪の標的になったケースもかなりあった。特に欧州での事件・事故被害者は5249人で、中国、日本などアジア太平洋地域(5193人)、米国・カナダなど米州地域(1955人)に比べ多かった。10年以上欧州への旅行商品を販売している旅行会社関係者は「現地警察が介入して解決したケースを見たことがなく、外交部に支援要請があっても制約が多く、解決をあきらめなければならない」と話した。

 英国永住権を持ち、韓国と英国を往来するAさん(47)は今年5月13日、英ロンドンで最近増えているという「偽警官」に900ユーロ(約10万6000円)を奪われた。Aさんは夫のBさん(47)と一緒にウォータールー駅付近の宿泊施設に向かう途中、路地で若い男が近寄ってきて、「警察だ。麻薬をやっているように見えるが、連行されたくなかったらカネを払え」と話しかけてきた。結局夫婦は手持ちの900ユーロを渡した。Aさんは「観光客が英国警察に届け出たところで解決は難しいので、届けは出さなかった」と話した。

 イタリアのフィレンツェを旅行していたCさん(21)は今月16日午後10時ごろ、ホームレスとみられる男による強盗被害に遭いかけた。路地で出会った男は手を振り上げ、殴る素振りを見せ、「スマートフォン、スマートフォン」と言ってきた。Cさんは「驚いて友人と声を上げたところ、近くにいたイタリア人男性2人が駆け寄り、それを見た強盗は逃走した」と振り返った。旅行専門家は「欧州は先進国だから安全だという考えは捨てるべきだ」と指摘した。旅行専門作家のオ・ジェチョルさんは「最近は2人1組がアンケートやインタビューを求めて近づき、1人が視線を引き付ける間に1人が物を盗む手口が流行している。特に難民が増えたイタリア、フランスのひと気が少ない公園は未明には『ジプシー密集地帯』になるので、遅い時間に行くのは危ないこともある」と指摘した。

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