目まぐるしく展開する韓半島(朝鮮半島)情勢を横目に、1世紀前の旧韓末を思い浮かべる人は多い。北朝鮮の核武装、揺れる韓米同盟、日本との葛藤、中国の圧力、根深い陣営対立。ソウル大学のハ・ヨンソン名誉教授(72)は、旧韓末に亡国の道をたどった朝鮮の失敗を国際政治的な観点から再考察してきた研究者だ。ハ・ヨンソン名誉教授のもっぱらの関心事は、もちろんこうした過ちを二度と繰り返さないために、大韓民国がどのような進路を取るべきなのかに集中している。先週発刊した『韓国外交史の再検討』と『愛の世界政治』(ハンウル刊)は、こうした知的努力の結実だ。旧韓末の失敗から何を学ぶことができるのか。9月18日、ハ教授にお会いした。

―朝鮮を亡国にまで追いやった決定的要因は何か。

 「19世紀後半の文明標準の変化に素早く対応することができなかったためだ。中華中心の秩序から近代国際秩序への転換に追い付けなかったということだ。富国強兵のために国内の力を集結するべきだったが、これにも失敗した。たとえ国内勢力を結集しても限界は見えていたため、国際的な力の活用が何よりも重要な時代だったが、海外勢力に利用されてばかりだった」

―高宗(コジョン)の俄館播遷(がかんはせん、1896年に高宗がロシア公館に逃げ込んだ事件)と親ロシア路線が、当時の国際秩序を読み誤った選択だったと批判する声もある。

 「俄館播遷は、高宗が生命の危機を覚えた現実から抜け出すための最後の手段だったはずだ。こうした選択が欧米列強の支持を受けることができないということまでは、考えることができなかったはずだ。高宗には日本の干渉を阻むために、外交力を発揮するだけの戦略的思考が足りなかった。1885年に英国が巨文島を占領したとき、英露が1世紀近くユーラシア大陸でしのぎを削った「グレートゲーム」の一部だという事実を果たして理解していただろうか。キム・オクキュン(当時の政治革命家)は、高宗が『英国がどこにあるのかも知らない家臣たちに取り囲まれている』と批判したほどだ」

―高宗は自らを守るだけの力のない弱小国は「万国公法」に保護されないということを知らなかったのか。

 「『万国公法』(当時の国際法)は1870年代に朝鮮に紹介された。高宗は1882年に開化政策を発表しながら、軍事力と万国公法の重要さを指摘した。当時の知識人たちは、力がリードする国際秩序において万国公法には限界があるという事実を明確に認識していた。高宗は、現実的に軍事力を取りそろえることができない状況下で、万国公法の力でも借りようとする非現実的な試みに出たのだ」

―結局、亡国の責任は国際秩序を正確に読み取ることができなかった高宗の無能さにあるのではないか。

 「『主権守護外交』に対する高宗の努力は認める。しかし、弱肉強食という世界秩序の中で高宗は弱々しい敗北者にすぎなかった。大韓帝国は自力で生存することができなかったため、中立化よりも列強が積極的に関与できるよう魅力ある国家として取り繕う必要性があった。しかし、高宗にはこうした能力がなかった」

―1世紀前の失敗から何を学ぶべきか。

 「21世紀の文明の標準的変化を読み取り、対応していかなければならない。韓国の運命を牛耳るのはグローバルリーダーシップの転換だ。米中が展開している新アジア太平洋(新亜太)の秩序構築競争で、韓国は局面を正確に読み取り、中進国としての力を最大限に活用し、積極的に参加していかなければならない。韓米同盟のフレームを維持しつつ、中国とは適切に関係を結んでいく戦略が必要だ。国内の全ての力を集結させなければならない。現在のように極端な陣営対立を引き起こしているようでは、危機を乗り越えることはできない。自主的な世界化、開かれた民族主義のような柔軟な思考を兼ね備えた若い世代が早々に登場する必要性がある」

―反米・自主・平等のような1980年代の古い価値観にとらわれた586世代(1960年代に生まれ、80年代に大学に通った現在の50代)が大統領府をはじめとする政治・社会で権力を掌握していると批判する声が絶えない。

 「586世代は非常に哀れな存在だ。民主化に寄与した功労は認めるが、これらの世代が大学時代を過ごした1980年代は、反独裁・反米闘争で想像力が抑圧されていた時代だ。自主・自立だけを叫ぶのは、19世紀的で単線的な思考回路だ。1世紀前の日本よりもいち早く富国強兵に乗り出すことができなかったのはなぜか、と批判する。586世代が変化する国際秩序を読み取り、生存と繁栄を成すことができなければ、再び後世の批判の的となるだろう」

―韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄により、70年間続いて来た韓米同盟に亀裂が入ったとの指摘もある。

 「米国は、韓国が同盟の価値をどのように評価するか検討するだろう。韓米同盟は、朝鮮半島で南北の軍事衝突を抑制し、韓国の経済的成長を裏付けた根幹だ。米国が主導する新アジア太平洋の秩序が形成されつつある21世紀に、韓米同盟の重要性はさらに増していく。韓国は今世紀が自主の時代ではなく、共主の時代であるということを肝に銘じて米国を最大限活用していかなければならない」

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