韓国政府は22日「国内の温室効果ガス排出量を2030年までに2億7640万トン減らす」と発表した。しかし原子力発電所を一気に減らすことを受けた電力分野での削減策が明確になっていないため、結果的に産業界の削減割合を高めるしかないことから「企業の負担が重くなる」との不満が相次いでいる。

 韓国環境部(省に相当、以下同じ)はこの日、上記の内容を含む「第2次気候変動対応基本計画」が国務会議(閣議)を通過したと発表した。環境部など17の関係部処(省庁)が今後5年かけて合同で取り組む気候変動対策の最上位計画だ。当初は2016年に第1次基本計画が発表されてからこれが21年に見直されるはずだったが、昨年政府が30年の温室効果ガス排出量をさらに削減する「温室効果ガス・ロードマップ修正案」を取りまとめたことを受け、当初の予定よりも早く発表された。政府は30年の温室効果ガス排出予想を8億5085万トンとしているが、目標は5億3600万トンに設定した。その差のうち2億7640万トンは国内で削減し、残りは国際市場での排出権取引などを活用するという。

■石炭火力発電所10カ所閉鎖後の対策は不明確

 しかし国内での削減計画については「具体性に欠ける」との指摘が相次いでいる。「石炭火力発電所の思い切った削減と再生可能エネルギーの拡大を推進する」とされるエネルギー分野の場合、削減目標(5780万トン)の半分以上に相当する3400万トンについては「来年までに方策を取りまとめる」という。石炭火力発電所60基のうち10基は閉鎖される計画だが、それによって減少する電力をどう賄うかについても具体的な計画はない。これについて環境部の関係者は「産業通商資源部が年末に発表する予定の第9次電力需給基本計画に記載されるだろう」とコメントした。

 産業部門は削減目標が9850万トンで、削減目標全体の35%とその割合が最も高いが、これについては「エネルギー効率を革新し、新技術の普及を通じて温室効果ガスの削減を実現する」としか記載されていない。産業界からは「脱原発政策によって石炭火力発電所が増え、それによって温室効果ガスも増加しているが、政府は民間企業にその対策や負担を押し付けている」など不満の声が上がっている。鉄鋼業界のある役員は「産業界も大枠では環境に配慮する方向に向かうのは当然だが、政府の政策速度があまりにも速く、それについていくのが大変だ」「環境関連の規制は米国や中国よりも厳しい欧州のレベルに合わせているので、企業にとっては大きな負担だ」などとコメントした。上記の環境部関係者は「2030年における産業部門の排出目標は3億8240万トンで、これを実際の排出予測と比較すると9850万トンを追加で削減する必要があるが、17年の排出量に比べれば1000万トンほどの削減ですむ」「高付加価値製品の生産構造に転換するといった努力をすれば削減できる量だ」と説明した。

■水素ステーション55カ所の設置は事実上不可能

 物流分野での削減対策は比較的具体的な内容が示されているが、その実現可能性についてはやはり疑問が残る。政府は「物流で3080万トン削減する」として2030年までに電気自動車300万台、燃料電池車85万台の普及を目指すとしている。22年までに全国の主要都市や高速道路に水素ステーションを310カ所設置し、30分以内に水素ステーションに行けるとする計画も同時に発表した。しかしこれは今年1月に予告された内容の焼き直しで、実現の可能性は低いとの指摘が相次いでいる。ある専門家は「政府の発表通りなら、年末までの2カ月間で水素ステーションを55カ所追加で設置しなければならない。しかし実際は1カ所の設置でも敷地の選定や許認可などの手続きで最低でも5-10カ月はかかる。それを考えると計画の実現は難しいだろう」との見方を示した。

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