今年8月22日に韓国大統領府が破棄を発表した韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は11月23日をもって正式に終了する。韓国政府がこの決定を覆し、その効力を延長できる期限まで一カ月も残っていないのだ。韓米日三角協力を重視してきた米国政府が韓国政府にさまざまな方面から圧力を加えているのはそのためだ。

 米国務省のスティルウェル次官補(東アジア・太平洋担当)は26日「GSOMIAは韓米日の安全保障にとって非常に大きな意義がある」「GSOMIAに戻ることを韓国に促したい」と述べた。来月5日に来韓予定のスティルウェル氏は「経済的な課題が安全保障に影響を及ぼしてはならない」ともくぎを刺した。今年7月に日本は韓国に対する輸出規制強化を発表したが、これを理由に韓国が8月にGSOMIA破棄を決めたことに根本的な疑問を呈したのだ。さらに米国防省のシュライバー次官補(インド・太平洋安全保障担当)も前日の25日「GSOMIAは北朝鮮のミサイル発射やサイバー攻撃などへの対応にプラスになる」「GSOMIAに対する米国の立場は明確だ」と発言している。

 韓国政府は「米国を通じた韓日間での間接的な情報のやりとりを定めた韓米日情報共有約定(TISA)があるため、これによってGSOMIAを補うことができる」と主張してきたが、米国の反応は否定的だ。米ミサイル防衛局のジョン・ヒル局長は今月7日、米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」とのインタビューで「GSOMIAが維持されて初めて最適なミサイル防衛が提供できる」「米日、韓米間の情報共有態勢によっても防衛システムの稼働は可能だが、最適の方法ではない」と説明した。

 ワシントンのある外交筋は26日(米国時間)「GSOMIA破棄の期限が近づいたため、米国は韓国大統領府にこれまでの方針を撤回させる大義名分を最大限提供する方策を検討している」と伝えた。来月5日に予定されているスティルウェル氏の来韓に加え、来月中旬にはミリー合同参謀本部議長による韓国と日本の同時訪問も予定されている。これらはいずれも韓国大統領府がGSOMIA破棄決定を見直す大義名分を与えるための事前の政治的な作業ということだ。

 しかし韓国政府は今なお「日本が先に輸出規制を解除しない限り、GSOMIAは延長しない」との立場を変えていない。ある韓国政府高官は25日「先に原因となったのは日本の報復措置だ。そのためGSOMIA中断決定を一方的になかったことにした場合、それは国民が納得しないだろう」と主張した。

 このような政府の原則論にはGSOMIAと関連する輸出規制、さらに根本的には徴用問題を期限内に解決するのは難しいという現実認識が横たわっている。当初、韓国政府がGSOMIA破棄をカードとしたのは、日本の輸出規制への対抗という意味合いからだった。昨年秋に韓国大法院(最高裁に相当)が徴用賠償判決を下してから日本が輸出規制強化を発表するなど、韓日関係は悪化の一途をたどっている。そのため韓国大統領府はGSOMIA破棄をこれに活用することを決め、それを通じて米国に仲裁の役割を求めたというのだ。韓国大統領府国家安保室の趙太庸(チョ・テヨン)第1次長は「GSOMIAの終了を決めこれを発表したのは、米国から(仲裁を)引き出すためだったと考える」とする一方「結果が出ていないのは望ましくないと言えるだろう」と述べた。

 GSOMIA破棄発表後の展開は韓国のもくろみ通りに行かなかった。米国は韓国に対して堂々と圧力を加え、執拗(しつよう)にGSOMIAの延長を要求してきた。しかし日本はGSOMIA終了を阻止するため新たな交渉に応じる意向がないことをすでに表明している。今月24日に李洛淵(イ・ナクヨン)首相と安倍首相が会談した後も、日本政府は「韓国が国家間の約束を守らないと両国関係は改善しない」として「徴用問題の解決が必要」との考えを明確にした。安倍首相も今月9日「GSOMIAが終了しても、日本の防衛に直接の支障はない」と発言した。最終的に韓国だけがGSOMIA終了期限に追われるという自縄自縛状態に追い込まれたのだ。かつて駐日大使を務めたシン・ガクス氏は「GSOMIAを延長しなければ、日本はもちろん米国でも外交面で大きく問題視され、韓国は双方から困難な状況に追い込まれるだろう」「全体的な破局に直面する前に、政治的な意志を持って解決に取り組まねばならない」と指摘した。

 徴用問題の解決が直ちに不可能であれば、まずは韓日間で公式な協議体だけでも立ち上げ、それに基づいてGSOMIAを延長すべきとの声も上がっている。趙太庸・第1次長は「韓国はGSOMIA終了を先送りし、米国が前面に立って韓日間の問題を解決する体系化された対話の場を開くことができれば、好循環構造を築けるだろう」と述べた。

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