韓国人の認知症ビッグデータが、個人情報保護など規制の壁に阻まれて十分な活用方法を見いだせずにいる。全羅南道光州地域に居住する60歳以上の約2万人を対象に実施した朝鮮大学校認知症国策研究団のコホート調査(特定の集団に対する追跡調査)の結果(以下、光州認知症ビッグデータ)が、光州地域でしか使用できないという半端なデータに転落するという事態に陥っている。

 4日、科学技術情報通信部と国会などによると、光州認知症ビッグデータは科学技術情報通信部(以下、科技情通部)が2013年に始めた認知症の脳地図事業の成果物だ。研究団はこの事業の課題として16年5月に認知症を予測する源泉技術を開発し、事業化に成功した。この過程で認知症研究の基礎となる長期的な社会人口調査資料が集まった。

 このような調査の結果は、地域・年齢・性別・遺伝情報などを基に特定の疾病の原因や影響などを調査する基盤となる。朝鮮大認知症国策研究団は、認知症の無料検診を受診した約2万人のうち、認知症発症の危険が高いと診断された約6100人の健康状態を追跡観察している。

 現在、米国国立衛生研究所(NIH)は、朝鮮大認知症国策研究団の光州認知症ビッグデータに関心を示している。朝鮮大認知症国策研究団に2年間で50億ウォン(約4億6700円)の支援を約束し、4000人を対象とした韓国人の認知症発症のゲノム情報研究を共同で実施することを提案している。

 光州認知症ビッグデータには、約6700件の脳の磁気共鳴画像(MRI)から集めた約8000件の個人のゲノム情報が含まれている。現在、国内の個人情報保護法、医療法、生命倫理法などによると、個人の身元情報、ゲノム情報などを国家の審議承認研究所や医療機関以外の場所で研究することや、やりとりすることは規制されている。

 このため、今回の米国NIHとの共同研究は、韓国研究財団や国家生命倫理審議委員会などで、国内の研究資産の海外流出の可否などを審議したうえで決定される。韓国研究財団側は問題ないとして事実上承認したという。問題は、このようにわれわれが先に確保した研究データに海外の保健当局が関心を示している一方で、国内での研究活用度は低下しているという点だ。

 米国は、ビッグデータのデータベース(DB)センターを通じ、地域の人口調査情報をいつでもどこでも活用できる。実際に、米国の認知症発症に関する医療臨床調査「ANDI」に15年間で約2600億ウォン(約240億円)が投じられ、そこから集められた認知症関連のゲノム情報や神経検査、MRI脳映像の情報が、米国の各地域にある57のセンターで研究目的で提供されている。

 国内では光州広域市がこのようなデータを活用できるインフラを整えるために、地域内に人工知能(AI)産業団地を造成し、規制自律特区に指定して認知症ビッグデータの活用に乗り出した。規制自律特区の中では医療ビッグデータを自由に利用できるからだ。光州市が整備を進めている国家認知症DBセンターの運営計画によると、科技情通部70%、自治体20%、民間支援10%の割合で予算に投入される。

 光州広域市戦略産業局のソン・ギョンジョン局長は「光州AI産業クラスター推進事業に国家認知症DBセンター設立を盛り込んだ」として「データ活用のための根本的な解決策ではないが、技術自律特区として承認されれば地域内では該当のデータを使用でき、今後は関連法改正などの段階を踏むことができる」と話した。

 しかし、2013年に認知症国策研究団事業を開始した科技情通部は、DBセンターの設立自体に疑問を呈している。光州地域内に設立すれば、使用が該当地域の企業に限られるため、ビッグデータの活用度が低下する上、今すぐに関連法を改正することはできないからだ。

 さらに科技情通部は来年から保健福祉部と共に、認知症克服に関する研究開発事業を実施する計画で、国家認知症DBセンター設立に別枠で予算を支援するのは困難との立場だ。認知症克服研究開発事業は、両部が1対1で総額1694億ウォン(約158億円)を投じ、認知症発症の原因を解明する基礎研究から予防治療技術の実用化まで全サイクルを支援する事業だ。

 科技情通部は、国家認知症DBセンターの設立の必要性についての質問に対し、書面での答弁で「認知症克服研究開発事業を担う主管研究機関が、今後わが国の認知症に関する研究開発(R&D)の求心点として『国家認知症研究センター』の役割を遂行するものと判断される」とした上で「これまで蓄積された成果とデータが死蔵することなく活用されるよう、持続的に協力する」と表明した。

 科技情通部のイ・チャンソン生命技術課課長は「来年度予算が確定すれば、福祉部と共に、認知症に関連するゲノム情報・臨床情報DBを構築する案をモデル事業として推進する予定」と話した。しかしモデル事業に光州認知症ビッグデータの活用が含まれているかどうかについては明言しなかった。

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