ラーメン、虫除け、マスク。

 2月23日(現地時間)にインド洋の島国モーリシャスで入国を保留され、隔離措置となった韓国人新婚夫婦らが、韓国側の現地領事協力官を通して受け取った品物はこれが全てだった。新婚の甘い夢を抱いて保養地を訪れた34人にとって、隔離後の2晩は「悪夢」だった。一行が隔離されている臨時保護施設はネズミや虫がうろつき、タオルすらなく、モーリシャス当局側からは夫婦1組につき1枚しか与えられなかった。計画通りであれば新婚旅行を楽しんでいたはずの一行は、隔離から3日たっても保護施設の外に出られないまま、じっと韓国外交部(省に相当)からの連絡を待たなければならなかった。

 モーリシャス政府は2月23日午後、一行が空港に到着するなりパスポートを取り上げ、隔離した。武漢コロナが広がった韓国から来たというのが隔離の理由だった。翌日、関係閣僚による非常緊急対策会議を開き、過去14日間に韓国訪問歴がある旅行客の入国を禁止すると公式に決定した。2月2日に中国に対して下した措置と同じものだ。

 モーリシャス在住の韓国人で現地の領事協力官を務める人物は、翌24日に新婚夫婦らに対して隔離の理由を説明し「2日間で幾何級数的に確定患者が増えた韓国の状況が急にメディアに出てきたので、モーリシャス政府は非常に驚いた」と語ったという。続いて、こうも言った。「この国では、保健省の指示には無条件で従わなければならない。大統領や外交部(省に相当)の長官が話をしても駄目だ。なぜなら、この国は自国民の健康、安全を最優先に考えているから」

 モーリシャスは小さな国だ。面積は韓国の50分の1程度で、人口は40分の1という水準にとどまる。2019年現在、モーリシャスの国内総生産(GDP)は142億ドル(現在のレートで約1兆5500億円、以下同じ)で世界126位。GDP1兆6300億ドル(約179兆円)、世界12位の韓国とは比べ物にもならないほどだ。

 ところが、自国民の健康と安全を最優先に考えるという点では、韓国よりも大国だと感じられた。実際、モーリシャスだけではない。世界最貧国の一つに挙げられる太平洋の島国キリバスは、どの国よりも早く、韓国を含め中国、シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ、米国などを訪問した場合、コロナ未発生国で14日間滞在して未感染の医療確認書を提出しないかぎり、自国に入国できないように措置した。

 新婚夫婦らのニュースが伝えられると、残念だという声があちこちから上がった。新婚夫婦一行に関する記事に付いたコメントはぐさりと来た。「韓国の人間はあんな扱いを受けているのに」という短いコメントには、5000件を超える「いいね」が付いた。

 臨時保護施設で2晩過ごしたキムさんが目にした、新婚旅行にふさわしい風景は、保護施設の鉄条網の外にちらりと見える海だけだった。キムさんは「すごく不便だが、その一方で、モーリシャス政府の措置は当然だという思いもある」と語った。この小さな国が当然だとしてやっていることを韓国はできないというのが、今、韓国国民が胸をたたいて嘆いている理由なのだろう。

イ・オクチン国際部記者

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