なぜ事前投票不正説が浮上したのか…

元韓国統計学会会長・ソウル大統計学科名誉教授朴聖ヒョン氏インタビュー(下)

-統計学的には理解できないが、有権者の投票に影響を与える政治・社会的変数もあるのではないか。

 「まさにそこだ。事前投票と当日投票の差には有権者の心を揺るがすような政治・社会的変数が果たしてあっただろうか」

-統合党候補の「暴言騒動」が事前投票に影響を与えたという分析があった。特に車明進(チャ・ミョンジン)氏のセウォル号関連の暴言は事前投票の前日に飛び出した。

 「暴言騒動は事実上投票当日まで続く。事前投票にだけ大きな影響を与え、当日投票には影響を与えなかったという主張は論理的ではない。暴言論争は民主党にもあった」

-柳時敏(ユ・シミン)氏の180議席発言があったことで、当日投票で有権者の政権けん制心理が働いた可能性は。

 「たとえそんな心理が働いたとしても、1000人以上の大きな標本集団ではこれほど異質な傾向が出ることはとても考えにくい」

-保守系のユーチューバーはソウル・仁川・京畿地域で民主党と統合党の事前投票での得票率が全て63対36だった点を巡り、「不正があった」と主張しているが。

 「両党の相対得票率が小数点を切り捨てて同じだったことは統計学的には非常にまれなケースだ」

-中央選挙管理委員会は「首都圏の有権者の投票傾向が似通っただけだ」と説明しているが。

 「そうだとしても、これほど同じ比率になる確率は非常に低い」

-この比率は全253選挙区のうち17選挙区(6.7%)での数字にすぎない。いくつかの疑わしい事例を集め、普遍化するという過ちを犯していないか。

 「17選挙区で63対36という数字出ることは統計学的にはほぼ不可能だ。さらにソウル・仁川・京畿という広域自治体で全て63対36になる確率は非常に低い」

-これは両党の得票率だけを比較したものだ。他の少数政党や無所属の候補の得票率を含めて計算すれば、ソウルは61対35、仁川は59対34、京畿は61対35で等しくはないが。

 「両党の得票率だけを比較したのは、万一不正が試みられたとした場合、統合党の票が民主党の票にすり替えられると考えたからだ。この比率自体を不正の証拠とすることは適切ではない。しかし、疑いを抱く根拠にはなる」

-仁川延寿区乙選挙区は民主党、統合党、正義党の候補の管外事前投票での得票数がいずれも管内得票数の0.39となり、不正疑惑が指摘された。

 「仁川延寿区乙選挙区は政党別に管内得票数に0.39という定数をかけると管外得票数が出る。起きにくいことだ。全国11の選挙区での事前投票で管内得票数と管外得票数の間にこうした関係が見つかった。定数がやや異なるだけで、城南市盆唐区甲で0.28、盆唐区で0.29、仁川南洞区甲で0.30、ソウル市松坡区丙で0.31などだ」

-投票傾向が似ているため、管外得票率と管内得票率でこうした数字がでるのではないか。

 「とても偶然でこうなることはあり得る。しかし、全ての党の管内得票率に一定の定数をかければ管外得票数が出るというのは統計的には非常に異例だ」

-統計学的に納得がいかなくても現実では起こり得る。特異な現象でも不正疑惑を指摘するのは論理の飛躍ではないか。

 「偶然が重なりそうなったと主張することはできるが、統計学的にはそうした偶然は発生しにくい」

-開票前の過程は監視カメラに映っている。電子開票機は外部の通信網とは隔絶されている。開票所では開票事務員、各党の立会人などが二重三重のチェックを行う。集計された票数は中央選管の専用ネットワークでサーバーに入力される。閉鎖回路なので外部からのハッキングは不可能だ。そうした現場を理解すれば、電子開票機やサーバーにチップを埋め込んだとか、事前投票用紙のQRコードが個人情報を記録していたといった説は現実性を欠くと言われるが。

 「自分は統計の観点からしか言えない。中央選管はこのように広まった疑惑を払しょくする責任がある。薄氷選挙区3カ所では再集計するしかないと思う」

■中央選管の信頼に関わる問題

-中央選管は落選候補者が選挙訴訟など法的手続きを取らなければ、再集計はできないとの立場だが。

 「中央選管は憲法が定める機関として信頼問題が生じているのだから、もっと積極的であるべきだ。統合党も選挙に不服を唱えるリスクを伴うが、国民的な疑惑を解消するためにも訴訟を起こす必要がある」

 4月28日には不正選挙を不正選挙を探知する統計分析専門家でミシガン大教授のウォルター・メベイン氏まで加勢した。「2020年韓国総選挙での不正(Frauds)」と題する論文で、「事前投票に異常な点が発見される」と主張したのだ。2日後、全国377の大学の現職・元教授が所属する「社会正義を望む全国教授会」は選挙不正疑惑を究明すべきだとする声明を発表した。

崔普植(チェ・ボシク)上席記者

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