イ・チョル前バリューインベストコリア代表は、7000億ウォン(現在のレートで約625億円、以下同じ)台の多段階金融詐欺を働いた罪で懲役12年を言い渡されて服役中の人物だ。被害者だけで3万人に達する。イ氏は最近、MBCとの獄中インタビューで「われわれは詐欺集団ではない。大韓民国の新たな成長動力をつくろうと努力したのだから、賞を与えることはできなくても侮辱を与えてはならない」と主張した。被害者たちは「MBCは詐欺師の代弁人なのか」と抗議会見を行った。

 イ氏を取材しようとしていたチャンネルAの記者に、イ氏の友人だという「情報提供者X」チ氏が接近した。与党系の支持者だというチ氏は、まず記者に対し「検察と交流があるか」という質問を投げかけた。記者が検事と親しいことを誇示すると、対話内容をひそかに録音し「検察とメディアの癒着」だとしてMBCに情報提供した。詐欺・横領で前科5犯のチ氏は現在、出国禁止状態で、別の詐欺事件で警察の捜査を受けている。チ氏の犯罪歴を問題にすると、与党系の各メディアは「なぜメッセンジャーを攻撃するのか」と書いた。

 これらのメディアは、5年前に終了した韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相の9億ウォン(約8000万円)授受事件の証人らを「詐欺師」「薬物中毒」などといって攻撃した。韓元首相に金銭を渡したという建設会社社長の故ハン・マンホ氏が法廷で陳述を覆すと、検察はハン氏の監房の仲間2人を証人として出廷させた。証人たちは「ハン・マンホ氏が韓元首相に金銭を渡したと言ったのを聞いた。陳述を覆す計画も一緒に話し合った」と証言し、裁判所もこれを認めた。しかし、与党系メディアは「詐欺の前科者と麻薬事犯の言葉など信じられない」として、証言者らが検察に買収されて韓元首相に不利な証言をしたと主張した。

 その上で、ハン・マンホ氏の別の監房仲間にインタビューした。その人物も、さまざまな詐欺・横領の前科があり、懲役20年以上の刑が確定して服役中の人物だ。その人物は「『詐欺師』と『薬物中毒』は検察に買収され、私は検察の取引に応じなかった」との趣旨の「良心宣言」をした。詐欺師たちの食い違う発言をめぐり、真実を突き止めなければならない状況だ。誣告(ぶこく)罪(虚偽告訴罪)とボイスフィッシングの前科がある『薬物中毒』の人物も、獄中インタビューで「実は、検察が虚偽の証言をさせた」と発言を覆した。検察は「全て、明らかに虚偽の主張」だと反発した。

 彼らの言う通り検察が虚偽の証言を強要していたとすれば、大きな問題だ。与党圏もこれを口実に、韓元首相の有罪判決をひっくり返そうとしている。しかし、だからといって韓元首相が金銭を受け取った事実がなくなるわけではない。韓元首相の無罪を主張するのであれば、詐欺の前科者たちの証言に反論するのではなく、ハン・マンホ氏が渡した1億ウォンの手形が韓元首相の兄弟が借りるマンションの保証金に使われた記録など、決定的な有罪の証拠に反論すべきだ。

 いつのころからか与党系メディアは、政権とぎこちない関係にある「尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察」を揺るがすために、刑務所取材に乗り出した感じだ。「情報提供者X」にインタビューしたあるメディアは、詐欺の被害者のことを考えずにXについて「正義感がある」とまで書いた。メディアが詐欺の前科者の派手な言葉をフィルターを通さずに伝えれば、執権勢力が同調する。詐欺師たちの全盛時代だ。

パク・ククヒ社会部記者

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