昨年6月30日午後、板門店の「自由の家」前で、韓国・北朝鮮・米国の3首脳が会った。だが当時、米国のドナルド・トランプ大統領も北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長も韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の出席を望んでいなかった、とジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が回顧録で主張した。会合当日の午前、青瓦台で行われた韓米首脳会談で、米国側は数回、文大統領の出席を拒否したが、文大統領は「ひとまず板門店内の観測哨所まで一緒に行こう」と同行を要請したというものだ。これは、本紙が発売前の21日に入手したボルトン氏の回顧録『The Room Where It Happened:A White House Memoir』(直訳=それが起きた部屋:ホワイトハウス回想録)の中で、韓半島(朝鮮半島)関連部分に出てくる内容だ。ボルトン氏の回顧録は23日(米国時間)に発売される予定だ。

 昨年6月の板門店米朝首脳会談は、その前日にトランプ大統領がツイッターに上げた「サプライズ提案」で実現した。韓国を訪問する予定だったトランプ大統領は「そこにいる間、北朝鮮の金正恩委員長がこの文章を見ていたら、ただ握手をしてあいさつするために非武装地帯(DMZ)で彼と会いたい」と書いた。参謀たちはみな驚いた。その渦中でミック・マルバニー大統領首席補佐官代行は「金正恩委員長とトランプ大統領の会談に割り込もうという文大統領の試みの相手もしなければならなかった」とボルトン氏は回顧した。ボルトン氏はさらに、「トランプ大統領は文大統領が近くにいないことを願ったが、文大統領は頑として出席しようとしたし、できるなら3者会談にしようとした」とも書いている。このため、米朝首脳の会談に乗り気でなかったボルトン氏は「文大統領との紛争がすべてを台無しにするかもしれないというかすかな希望を抱いた」という。その理由を「なぜなら、金正恩委員長も文大統領が近くに来るのを望んでいないことは明らかだったからだ」と説明した。

 ボルトン氏の回顧によると、板門店会談当日の6月30日午前、青瓦台で行われた韓米首脳会談で、米国側は数回にわたり文大統領の出席を拒否したという。文大統領は「金正恩委員長が韓国領に入った時、私がいないと不適切に見えるだろう。金正恩委員長にあいさつをして、彼をトランプ大統領に取り次いでから去りたい」と提案したという。マイク・ポンペオ国務長官は「文大統領の考えを前日夜に打診したが、北朝鮮側が拒否した」と言った。トランプ大統領は「私は文大統領が出席することを望んだが、北朝鮮の要求通りにするしかない」と言い逃れをしたとのことだ。

 それでも文大統領は「これまで大統領がDMZを訪れたことはよくあったが、米国大統領と韓国大統領が一緒に行くのは初めてだ」と同行を求め続けたとボルトン氏は振り返った。トランプ大統領は「この大きなチャンスを逃したくない。金正恩委員長に言いたいことがあるし、警護部門が日程を調整しているので、彼らの言葉に従うしかない」とあらためて拒絶した。トランプ大統領はまた、「金正恩委員長がどのように考えるか、私は少しは理解できる。私に会いたいと思っているのは分かる」として、文大統領に「私をソウルからDMZへと見送って、会談後、烏山空軍基地でまた会ってもいい」と言った。これは事実上、「3者会談」を拒絶したものだ。だが、文大統領はこれを受け入れず、「DMZ内の観測哨所(OP Ouellette)まで同行した後、次に何をするかを決定しよう」と言ったという。

 文大統領は当時、最終的に板門店の「自由の家」までトランプ大統領と金正恩委員長を案内する役割をした。韓国・北朝鮮・米国の首脳が3者会談をした時間は4分程度に過ぎなかったが、青瓦台はこの時、「3首脳の会談はもう一つの歴史になった」とコメントした。

 ボルトン氏は北朝鮮の非核化に関する韓国政府の見解も批判した。特に、昨年2月のハノイにおける第2回米朝首脳会談が決裂した数日後、鄭義溶(チョン・ウィヨン)青瓦台国家安保室長が文大統領の「schizophrenic(統合失調症的)な考え」を伝えたとボルトン氏は主張した。文大統領は米国が「北朝鮮の『行動対行動』提案を拒否したのは正しかった」と言いながらも、「寧辺(の核施設)を解体しようという金正恩委員長の意志は非常に意味のある第一歩で、北朝鮮が引き返せない非核化段階に入ったことを示している」と述べたというものだ。ボルトン氏は金正恩委員長の寧辺核施設解体提案について、「明確に定義されたことはない。私には『行動対行動』と非常によく似たものに聞こえた」と書いた。

 「行動対行動」とは、北朝鮮が核開発の一部を放棄すれば、米国もそれに相応する補償をしながら、段階的に非核化をしようという提案だ。ボルトン氏は、金正恩委員長の寧辺核施設解体提案そのものが「行動対行動」なのに、文大統領は「行動対行動」ではないと言いながらも、寧辺解体の提案は高く評価したことを批判したものだ。

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