「うそには三つの種類がある。うそ、真っ赤なうそ、そして統計だ」

 これは英国の政治家レナード・コートニーが述べた言葉だといわれている。ウィキペディアによるとレナード・コートニーは1832年生まれだが、当時もこのような言葉があったということを考えると、執権勢力が自分に有利なように統計を活用するのは古今東西変わらないようだ。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は数年前の所得主導成長から最近では不動産まで、統計を政権に都合のいいように活用しているとの指摘を受けてきた。青瓦台(韓国大統領府)は文大統領の執権直後から所得主導成長を強く推進してきたが、2018年5月の統計庁の家計動向調査では、青瓦台の期待とは裏腹に低所得層の所得が減少し、低所得層と高所得層の所得格差がさらに拡大したという結果が出た。その後青瓦台は統計庁長を交代した。当時のファン・スギョン統計庁長は交代させられた直後、イーデイリーとのインタビューで「私はあまり言うことをよく聞く方ではなかった」と話した。

 住宅政策を担当する国土交通部(省に相当)は今年7月、経済正義実践市民連合(経実連)が「文在寅政権発足以降、ソウルのマンション価格が約52%上昇した」と発表すると「文在寅政権発足後、ソウルのマンション価格の上昇は14.2%だった」と反論した。経実連が14.2%の根拠について10回以上質問したが、国土交通部は統計法を盾に答弁を拒否したという。

 過去3年間でソウルのマンション価格がどれほど上昇したのか調べるために、相対的に庶民の多く住む冠岳区、江北区、恩平区、蘆原区、衿川区のマンション団地10か所を無作為に選び、実取引価格を直接調べてみた。団地10か所のうち最近の取引価格が2017年(5月以降)の取引価格より低いのは、恩平区駅村洞にあるAマンションの専有面積13.68平方メートルの物件1戸だけだった。このマンションは17年10月には1億3500万ウォン(現在のレートで約1200万円、以下同じ)だったが、今年6月に1億3300万ウォン(約1190万円)で取引された。ほかの9か所の団地は平均50.5%、価格が上昇した。

 マンションの価格動向を算定する別の機関の数値を見ても、国土交通部の釈明よりも経実連の発表内容の方が信頼できる。KB国民銀行が発表しているソウルのマンション売買価格指数は17年5月が84.1(19年1月=100基準)だったが、今年8月は110.1と30.9%上昇した。韓国鑑定院によるソウルの共同住宅売買実取引価格指数(06年1月=100基準)も、同じ期間に93.8から134.6へと43.5%上昇した。いったい国土交通部はどんな資料を根拠に3年間でソウルのマンション価格が14.2%上昇したと述べたのだろうか。

 統計は説得する上での強力な武器だ。所得主導成長がいかに素晴らしい政策なのか、口でしつこく説明するよりも「1年やってみたらこんな結果が出た」と統計を見せつけた方がはるかに説得力がある。執権勢力が、自分たちにとって都合のいい統計が出なければ統計自体を変えたがる理由がそれだ。

 過去にあったことを数字で示してくれる統計は、今後進むべき方向をも示してくれる。例えばある地域に何年も住宅の供給がないのに人口が増加し続ければ、住宅価格が上昇する可能性があるため住宅の供給を増やさなければならない、という形だ。統計自体は左派でも右派でもない。統計で良くない結果が出れば、なぜ良くないのかを研究し、方向性を変えなければならないのに、現政権は統計自体を変えようとする。不動産対策を20回以上も発表したにもかかわらず十分な成果が出ないのには、全て理由があるのだ。

チョン・ジェホ経済部長

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