1年半にわたって米国でバッテリー訴訟合戦を繰り広げているLG化学とSKイノベーションが最近、互いに対する非難のレベルを強め、場外での誹謗(ひぼう)中傷合戦を続けている。相手を非難する文書も相次いで発表している。LG化学が「破廉恥な振る舞いをしたSKイノベーションはメディアプレーをやめよ」と言えば、SKイノベーションはLG化学に対し「『訴訟パワハラ』をやめよ」と反論する、といった具合だ。両企業の感情の溝は深まるばかりで、互いをコーナーに追い詰めている。世界のバッテリー市場をリードする韓国の企業がこのような泥仕合を繰り広げるのは近年では珍しいことだ。

 バッテリーの営業秘密侵害訴訟を担当する米国国際貿易委員会(ITC)の最終判決が、本来の今月5日から3週間後に延期されたとき、業界では「交渉時間を稼げるため両社にとって好材料」との意見が優勢だった。しかし、双方は依然として相手の求める賠償金について、根拠がないとして不満を隠さない。LG化学側は「数百億ウォン(約数十億円)の合意金を提示して、なかったことにしようと言うとは、話にならない」と主張し、SKイノベーション側は「営業利益侵害の根拠も明確に提示できない状況で、どうやって合理的な交渉が可能なのか」と真っ向から反発した。

 「営業秘密侵害」で早期勝訴判決を受けたLG化学が、SKイノベーションと合意しないまま最終判決で勝訴したとしても、訴訟は長期化する可能性が高い。SKイノベーションが判決を不服として米連邦高等裁判所に控訴するか、供託金を出して米国の行政府に60日間のレビューを申請するなどの選択肢があるからだ。訴訟の長期化に伴って不確実性が増大すれば、両社にとって負担となるのは間違いない。バッテリー工場の設立と次世代製品の開発などに膨大な投資資金が必要な中、既に両社は訴訟だけで約4000億ウォン(約360億円)を支出したといわれている。

 競争の激しい世界のバッテリー市場で、不確実性は競争力の弱体化を意味する。法的攻防が長期化すれば、世界的な完成車メーカー各社はバッテリー供給の遅れなどの不確実性を避けるために、別の供給企業を探し始めるだろう。すでに中国1位のバッテリーメーカーCATLは、これまで韓国企業の主な取引先だった自動車メーカー各社と相次いで協力契約を結んでいる。世界1位の自動車グループ・フォルクスワーゲンをはじめ、ドイツのダイムラーグループ、米国の電気自動車メーカー・テスラなどもLGとSKのバッテリーの割合を減らし、中国など供給元の多角化に乗り出している。

 

 このところグローバル市場の競争構図は、個別企業同士の1対1の争いではなく、生態系に基づいたチーム同士の争いだ。欧州は安全保障の次元から、バッテリー産業の生態系造成に乗り出した。未来の核心事業である電気自動車のバッテリー需給を他国の企業に依存すれば、自国の自動車産業をはじめ雇用まで打撃を受ける可能性があると判断したわけだ。欧州各国が韓国のバッテリー企業に代わる体系を構築すれば、世界のバッテリー市場1位のLG化学をはじめ今後の活路を探っている国内各企業の活躍は、ただの蜃気楼(しんきろう)で終わりかねない。

 兵法三十六計のうち16番目の教えに「より大きなものを捕らえるためには相手を極端に追い詰めない」という意味の「欲擒姑縦(よくきんこしょう)」がある。敵を追い詰めすぎれば敵も必死で反撃するため、望むものを手に入れるためには袋小路は避けなければならない、という内容だ。

 現在、LG化学とSKイノベーションが繰り広げている国内外の訴訟は十数件に達するが、鋭い言葉が飛び交うだけで、生産的な協議はとうの昔に選択肢から外されてしまった。井の中でかわずのように争っていると、一瞬にして企業は淘汰されてしまう。世界の市場で最後まで生き残るためには、協力して投資し「Kバッテリーの生態系」を構築していくことが、LGとSKにとって本当に集中すべきことではないのだろうか。世界1位という数字に酔っている間に、ピンチは既にすぐそばまで近づいて来ていたのかもしれない。

◆世界の特許出願件数1位はHUAWEI、LG化学は?

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