米国の電気自動車メーカー「テスラ」が、高級セダン「モデルS」の価格を1週間で2度も引き下げた。モデルSロングレンジを基準に販売価格を見てみると、10月13日に7万5000ドル(現在のレートで約791万円。以下同じ)から7万2000ドル(約759万円)に、翌14日にはさらに6万9420ドル(約731万9600円)に引き下げられた。テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は、こうした内容をツイッターで告知するとともに「われわれは挑戦状を投じ、予言は現実になるだろう」とした。これは、9月に行われた電池事業の説明会「Battery Day」での発言を念頭に置いたものとみられる。イーロン・マスクCEOは、バッテリー価格を下げて2022年には2万5000ドル(約264万円)の電気自動車を作りたいと言った。

 テスラがモデルSの価格を下げた理由については、さまざまな解釈が出ている。「50万台納入という今年の目標値を達成するため」、あるいは「競合他社がテスラ車に次ぐ性能の電気自動車を発売したことから、これをけん制するため」だという。自動車メーカーの看板でもある主力セダンのモデルSの販売量が減り続けたことを受けて価格を下げた-という指摘もある。

 理由はどうあれ、自動車の購入を巡って悩んでいる消費者の立場からすると、車の価格が引き下げられるのは歓迎すべきことだ。問題は、韓国ではモデルSの価格が1回の引き下げ分しか反映されていないという点だ。モデルSロングレンジの価格は、10月13日に1億800万ウォン(約998万円)から1億400万ウォン(約961万円)に下げられたが、翌日の2回目の価格引き下げは反映されなかった。現在の米国での販売価格と比較すると、韓国の方が2000万ウォンほど高い。韓国におけるテスラ車の販売価格は米国本社のグローバル価格政策に基づくが、これに関してテスラ・コリア側は「追加の価格引き下げについて、公知されていることはない」とコメントした。

 韓国の消費者を差別しているという論争は、今回が初めてではない。今年5月、テスラは「モデル3」の価格を米国で250万ウォン(約23万円)分ほど引き下げたが、韓国では価格をそのまま維持した。モデル3の韓国国内での価格は少しずつ上がり、昨年8月の発売当時は5239万ウォン(約484万円)だったのが、現在ではおよそ250万ウォン引き上げられ、5479万ウォン(約506万円)で販売されている。北米、中国など主要市場で価格を徐々に下げる一方、韓国では逆に価格を上げているのだ。

 こうした価格政策について、会社側から明確な説明はない。ただ、最も有力な理由としては、韓国では補助金をたくさんもらえるので価格を下げる必要性を低く見積もっている-という。テスラは今年、韓国でおよそ2000億ウォン(約185億円)の補助金の恩恵を受けるという見込みが出ている。逆に米国では、補助金を受け取れない状況だ。米国ではメーカーごとに販売台数が20万台になるまで電気自動車の補助金が与えられるが、テスラは既に2018年の時点で販売台数20万台を突破した。

 テスラ車の価格は世界で随時、引き上げられたり引き下げられたりしている。消費者としては、自動車メーカーがいつ車の価格を引き上げるか、あるいは引き下げるか分からないのなら、運任せで車を買うしかなくなる。数千万ウォン(1000万ウォン=約92万円)する自動車を買っていって、わずか数日後に価格が落ちることもあり得るし、購入前にいきなり価格が上がることもあり得る。韓国の電気自動車市場は世界的に見て大きな市場ではないので、こうした「ゴムひも政策」を固守しているということもあり得る。それでも韓国は、テスラが最も多くの自動車を売っている国の一つなのに、「冷や飯」論争がなくならないのはひたすら残念に思う。

ピョン・ジヒ記者

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