韓国統計庁が5年ごとに実施している人口住宅総調査をめぐり、プライバシー侵害ではないかと騒動になっている。調査を受けた人々はこのところ、「死亡した子がいるか、配偶者と死別したのかなどの敏感な質問をなぜするのか」「不動産問題で神経過敏になっているのに、家が持ち家か賃貸なのか突っ込んで聞かれて爆発した」などの不満をインターネット上に書き込んでいる。一部の調査員の質問が不適切である可能性と共に、個人情報流出への不安から、この5年間で国民のプライバシー保護意識が高まったためという分析もある。

 ソウル市内に住むキムさん(42)は「調査員が家に来て、数十分間にわたり根掘り葉掘り聞くので非常に不愉快だった」「『死んだ子がいるか』とか、『配偶者と死別したのか』とか、『住宅価格はいくらなのか』とか、『水は何を飲んでいるのか』など聞かれ続けたが、本当に国がやっている調査なのかと思った」と疑問を呈した。全国民の20%を標本とする人口住宅総調査はまずオンラインで行われ、回答していない国民を対象に1日から調査員が訪問調査を実施している。今年の質問は大きく分けて45問で、妊娠の計画があるのか、家は持ち家なのか賃貸なのか、職場と役職、家に部屋がいくつあるのか、などの質問もあった。このうち、子と関連しては「死亡した子がいるか」などの詳細項目もある。今年新たに加わった質問では、「単独世帯ならば1人で暮らしている理由が何なのか」「ペットがいるか」「水はミネラルウォーターを飲んでいるのか、浄水器を使っているのか」「体が不自由でないのか」などだ。これに対して、「完全に戸口調査(調査員が全戸を回って実施した調査)だ」「2020年にこのようにプライバシーをほじくってもいいのか」「共産国家を経験した」という不満の声が上がっているのだ。

 「調査員が常識に合わない質問をしている」という指摘もある。あるインターネット掲示板には10日、「(調査員が)74歳の母に子どもをもっと産むつもりがあるのかどうか聞いていった。本当にとんでもない質問で、詐欺師ではないかと疑った」という投稿があった。事実、15歳以上の女性を対象に出産計画の有無を問う質問があるため、調査員はこれを高齢者にもそのまま適用して質問したものと思われる。今年の人口住宅総調査に動員された調査員は約2万7000人で、オンライン教育・オフライン教育を経た後、調査に当たっている。

 政界からも批判の声が上がっている。野党・国民の力の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)議員は同日、フェイスブックに「現場調査の過程で、個人のプライバシーを侵害する質問が多く、住民から抗議が殺到している」「個人に関する質問の中で『夫婦が寝室を別にしているか』『私生児がいるか』などの不愉快な質問が多数含まれている」と書いた。そして、「統計庁などの関係部処(省庁)は改善対策作りに取り組まなければならない」と指摘した。同党のキム・ウン議員も「依然として1970年代から抜けられていないようだ。むしろビッグデータで推算したほうがましだろう」と述べた。

 人口住宅総調査をめぐるプライバシー侵害騒動は今回が初めてではない。前回の調査が行われた2015年11月には、ある市民が統計庁を相手取り、人口住宅総調査は個人の私生活上の秘密や自由などの基本権を侵害するという理由で憲法訴願審判を請求した。これに対して2017年、憲法裁判所は「調査を通じて達成しようとしている公益は、請求人の私益制限よりもはるかに大きく、重要だ」として、人口住宅総調査は合憲だと判断した。

 統計庁は「これらの質問は国連人口調査ガイドラインに準じて設けられたものであり、政策に生かすため必須の質問だ」と説明した。特に、「死亡した子がいるかどうか」「配偶者と死別したのか」「再婚かどうか」「初婚はいつか」などは敏感な設問である可能性はあるが、乳児死亡率、死亡率、離婚率などを把握するのに必須だ、という説明だ。統計法に基づいて行われた調査で回答した内容は徹底的に秘密として保障され、暗号化して管理されるとしている。統計庁関係者は「不必要な騒動が起こらないよう調査員を再教育する方針だ」としながらも、「現状に合わせた政策策定のためには細かい部分まで調査する必要がある。プライバシーなど重要な個人情報の流出が心配ならば、ホームページなどを通じて非対面調査も可能なので、人口住宅総調査には是非とも応じてほしい」と説明した。

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