2018年4月、白雲揆(ペク・ウンギュ)産業通商資源部長官(当時)は、月城原子力発電所1号機を2年半継続稼働すると報告した原発課長に「お前、死にたいのか」と言い、「即時稼働中断」という内容に報告書を書き直させたという。産業通商資源部の実務担当者はその段階まで、韓国水力原子力(韓水原)の理事会(取締役会)が月城原発1号機の早期閉鎖を議決しても、原子力安全委員会の永久停止許可が出るまで2年半程度は稼働を継続するという意見を持っていた。原発局長は同年3月15日、2年半の追加稼働計画を白元長官と当時の青瓦台秘書官に報告までしていたという。しかし、白元長官は4月3日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「月城原発1号機の稼働中断はいつ決定するのか」と質問したと伝え聞き、原発課長に「お前、死にたいのか」という暴言まで吐き、計画を変えさせたというのだ。

 「お前、死にたいのか」という叱責はまるでヤクザの中堅幹部が部下に対し、「ボスの支持に従わなければ、お前も俺も死ぬぞ」と怒鳴りつける場面を見ているようだ。原発課長は監査院に対し、「とても侮辱されたと感じた」と証言した。原発課長はそう感じながらも、長官が指示した通りに韓水原の本部長を呼び出し、「月城原発1号機をわずかでも再稼働してはならない」と通告した。原発課長は会計法人の関係者を呼び出した際にも、「はっきり言って、政府が原発を稼働させなければ、利用率が上がることはないではないか。月城原発1号機の将来の利用率は30-40%にしかならないはずだ」と強引な物言いで経済性評価をねじ曲げるように圧力をかけた。

 産業通商資源部の職員は自分たちの行動が職権乱用、業務妨害など違法であることを認識していた。だから、韓水原や会計法人に圧力をかけたことが発覚しないように会議資料を改ざんさせ、後日オフィスのパソコンの文書数百件を削除していた。違法であることを知りながらも従ったのは、大統領の指示に歯向かえば公職生命を失うと考えたためだろう。「お前、死にたいのか」という言葉は長官が発したが、その震源は大統領であり青瓦台だ。国家運営が王朝時代のように逆戻りしてしまった。

 全ては大統領の脱原発への執着と負けず嫌いに端を発するものだ。これまで文在寅大統領が脱原発を掲げて行った発言は、「福島原発事故で1300人以上が死んだ」といった完全に誤った内容だったり、「設計寿命が切れた原発はセウォル号同然だ」といったとんでもない例え程度だった。それでいて、チェコ大統領との会談では「韓国の原発は40年無事故で稼働している」と自慢し、国民をあきれさせた。いくら大統領でも政策の副作用や国民の反対が大きければ、自分の考えに間違った部分がないかどうか考え、多角的に検討を行うべきだ。文大統領は正反対だ。むしろ「なぜ月城原発1号機を早く閉鎖しないのか」と追及し、我を張った。公務員はそうした指示をしかたなく履行し、相次いで監査を受け、懲戒されたり、検察の捜査対象になったりしている。

 月城原発1号機だけでなく、現政権発足後、工事が中断された新ハンウル原発3、4号機も来年2月までに工事が再開されなければ、発電事業許可自体が取り消されるという。新ハンウル原発3、4号機には既に7900億ウォン(約748億円)が投じられ、10%以上工事が進んだ。建設が中止されれば、韓水原は斗山重工業などへの損害賠償を迫られる。結局は国民の負担になる。そのカネは全部文大統領らが払って当然だ。

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