北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はコロナ感染者を「0」と主張しているが、これについて「おかしい」と指摘した韓国外交部(省に相当、以下同じ)の康京和(カン・ギョンファ)長官に対し、金与正氏が9日「前後を計算しない妄言」と激しく非難した。「凍り付いた北南関係に一層寒々しい冷気を吹き付けたいと考え、疲れて病気になったようだ」と侮辱の言葉も浴びせた。康長官は5日、国会で開催されたセミナーで「コロナが『北朝鮮をより北朝鮮らしく』している」と述べた。金正恩氏は2カ月前「コロナ感染者はいない」と主張する一方で、「海の水がコロナに汚染される」との理由で漁業や塩田での作業を禁止するなど、非理性的な統治行動を行っている。北朝鮮住民の生計において命綱とも言える中国との密貿易も全て禁止し、中国からの食糧支援まで拒否しているという。これについて康長官は「(北朝鮮は)より閉鎖的になった」と指摘したわけだが、北朝鮮集団は正しいことを言われるとすぐこのように逆切れする。

 金与正氏は6カ月前にも北朝鮮へのビラ散布を激しく非難し、韓国政府に対し「(禁止)法でも作れ」と要求した。これを受け韓国統一部は「準備中」とコメントし、与党・共に民主党は8日「金与正下命法」を国会常任委員会において単独で採決し可決した。金与正氏の一言によって、韓国の憲法で保障されている表現の自由に反する法律が韓国の国会で成立したのだ。うそのような本当の話だ。韓国国防部は「北朝鮮がわが国の公務員を銃殺し遺体を焼却した」と発表した。「蛮行を確認した」という表現も使った。ところが北朝鮮が「射殺はしたが、焼却はしていない」と反論すると、それに合わせるための「遺体捜索のジェスチャー」として海上での捜索ショーを行った。韓国軍が西海防御訓練を行ったことが報じられると、北朝鮮がこれを非難したため、青瓦台(韓国大統領府)は即座に韓国軍幹部らを呼び、事実上の叱責(しっせき)を行うようなこともあった。

 今年6月に「哨戒艦『天安』爆沈の主犯」とされる金英哲(キム・ヨンチョル)が韓国国防部の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)長官を名指しし「軽薄で愚昧(ぐまい)だ」と非難した。それから2カ月後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は国防長官を交代させた。北朝鮮が開城の南北連絡事務所を爆破した後には統一部長官が辞任した。金与正氏は康京和長官に対して「代償を払うようになるだろう」と脅迫した。文大統領は「存在感のない外交部長官は交代すべきだ」との指摘にはこれまで一切応じようとしなかったが、今回文大統領が最も重視する金氏兄妹から外交部長官への非難が飛び出した。これに文大統領がどのような反応を示すかに注目が集まっている。

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