放送設備専門のA社は昨年6月、新型コロナウイルス感染症の治療薬を開発すると発表した。2カ月後には治療薬開発子会社も設立した。A社はコロナ治療薬を服用が容易な錠剤タイプで開発すると表明した。発表のたびにA社の株価は急騰。1年前に9000ウォン前後だった株価は一時2万ウォン近くまで上昇した。しかし、直近の株価は1万ウォン台前半にまで反落している。医療界はA社のコロナ治療薬開発計画は現実性を欠くとみている。

 昨年、コロナの感染拡大が本格化し、韓国の製薬・バイオ企業が治療薬やワクチンの開発に先を争うように参入した。A社のように、全く関連がない分野の企業まで加わった。しかし、これといった結果を出した企業は今のところない。その間、そうした企業の株価だけがジェットコースターのような動きをした。製薬業界関係者は「株価で味を占めた会社は多いが、国産のコロナワクチン・治療剤を本当に作れる会社はほとんどない。ファイザー、アストラゼネカなど世界的な製薬会社のワクチンが既に普及しており、今年が過ぎれば大半の企業がそっと研究開発を取りやめる可能性が高い」と指摘した。

■韓国中小製薬会社、臨床試験の募集難航

 中小製薬会社の場合、臨床試験すらまともにできずにいる。国家臨床試験支援財団によると、1月11日現在で食品医薬品安全処(食薬処)が承認した製薬会社のコロナ関連臨床試験患者募集目標は5326人(36件)だが、募集を完了したのは650人(8件)で全体の12%にすぎない。治療薬を開発中の富光薬品と新豊製薬はそれぞれ昨年4、5月に食薬処から臨床試験の承認を受けているが、まだ人数が集まらずにいる。

 製薬・バイオ業界では国産のコロナ治療薬・ワクチン開発が最初から誇張されていたと指摘する。まず、韓国の製薬各社は新薬開発経験がほとんどない。特に国内に確定患者が多くない上、大半が軽症患者なので、臨床試験自体が困難な面もある。韓国政府が「コロナ克服」を叫びながら、支援には消極的だという批判もある。韓国政府がコロナ治療薬・ワクチン開発に支援を表明した予算は1936億ウォン(約182億円)にすぎない。米ファイザー1社が年間で使う研究開発費だけで10兆ウォンにもなる。中央大薬学部のソ・ドンチョル教授は「国内製薬各社が世界的な製薬会社よりも優秀な治療薬やワクチンを開発することは奇跡に近い」と話した。

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