韓国政府は21日、新型コロナウイルスワクチンの接種計画について、高齢者介護施設などの65歳未満の入所者、従事者(36万7000人)に26日から英アストラゼネカ製、27日からはコロナ治療に当たる医療機関の従事者(5万8000人)に米ファイザー製のワクチンをそれぞれ接種すると発表した。今年11月までに集団免疫を達成することが政府の目標だ。しかし、計画は容易ではないとの分析も示されている。

 世界的な経済分析機関「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」は、最近まとめた報告書「ワクチン接種状況に対する世界分析」を通じ、韓国、シンガポール、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、日本など大多数の先進国・地域が人口の60-70%の免疫力を持つのは2022年半ばになるとの見通しを示した。ワクチン接種が各国の計画よりも全体的に遅れるとも予想した。

 1946年に設立されたEIUは英経済誌エコノミストの系列企業で政治・社会・環境の変化に伴う世界経済の分析で優れた評価を受けている。EIUはワクチン供給が円滑には進まないとみている。EIUは「ワクチンに対する需要が供給を大きく上回っている状況で現在までワクチンの大半は豊かな国が占有した。多くの国がワクチン接種で困難に直面する」と指摘した。

 EIUは年末までに全世界の人口に相当する138億回分のワクチン生産が可能だとみている。アストラゼネカのワクチンが30億回分で最も多く、ノババックスが21億回分、ファイザーが14億回分、中国医薬集団(シノファーム)が13億回分などの順だ。EIUは早期にワクチン確保に成功した米国、欧州連合(EU)は今年後半にも集団免疫に達すると予想した。しかし、先進国中心にワクチン確保が偏り、韓国、日本、シンガポールなどは来年半ば、中国、インドをはじめとする大多数の開発途上国は来年後半、アフリカなどの貧困国は23年以降にならないと集団免疫には達しないとした。

■ワクチンの効果考えると90%の接種必要

 韓国政府は今年9月までに全国民(5183万人)の70%(3628万人)に1回目の接種を終え、11月に集団免疫を達成できると自信を深めている。しかし、そこに目標は楽観的過ぎるとする指摘が示された形だ。理由はいくつかある。

 韓国が導入を予定しているワクチンは現在5種類だ。予防効果はさまざまだ。アストラゼネカのワクチンは62ー70%、ファイザーは95%、モデルナは94.1%、ノババックスは89.3%、ヤンセンは66%などとなっている。ワクチン効果を平均80%とみて計算すると、韓国の全人口の70%(3628人)が抗体を持つためには4535万人(約87%)に接種しなければならない。これは政府が提示している70%の水準をはるかに上回る。高麗大九老病院感染内科の金宇柱(キム・ウジュ)教授は「単純に接種率が70%だからといって、集団免疫が形成されるのではなく、70%がウイルスを無力化する『中和抗体』を持たなければならない。その事実を政府は正確に告知する必要がある」と指摘した。高麗大医学部予防医学科のチェ・ジェウク教授も「アストラゼネカのワクチンを1000万人に接種すれば、うち免疫を持つのは600万-700万人だ。接種スピードの限界などを考えると、現実的に11月の集団免疫達成は困難ではないか」と分析した。

■変異ウイルス・接種率低下に備えるべき

 韓国政府は抗体を獲得した人の割合が60-70%になれば、集団免疫を達成できると説明してきた。しかし、その基準も緩いと評されている。国際的にもそれを上回る割合が示されている。世界保健機関(WHO)のキャサリン・オブライエン予防接種責任者は昨年、「60-70%という推定値は低過ぎる」と述べた。コロナ流行初期に「集団免疫のためには人口の60-70%が抗体を持たなければならない」と述べていた米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長も基準を70-75%に引き上げ、最近さらに75-85%に上方修正した。そのためにはワクチンの接種率をできるだけ高めるべきだとした。ワクチンの接種率は麻疹の集団免疫に必要な90%が求められることもあり得るとも指摘した。

 感染力、毒性が強い変異ウイルスが広がっている点を考えると、11月の集団免疫達成はさらに遠のきそうだ。南アフリカ変異株などに対し、既存のワクチンの効果が劣るという研究結果が相次いで示されているためだ。金宇柱教授は「11月に集団免疫が達成できると安心するのではなく、さまざまなシナリオに備えるべきだ。ウイルスの変異の対処できるように、アップデートされたワクチンの確保などに今から努力すべきだ」と指摘した。

 ワクチンに対する国民の信頼を高めることも11月の集団免疫を達成する条件となりそうだ。ワクチンに対する信頼が低下すれば、接種拒否につながりかねないからだ。ソウル大のユ・ミョンスン教授のチームが今月5-7日、成人男女1068人を対象にアンケートを実施した結果、10人中3人はワクチン接種を先延ばしまたは拒否すると答えた。現在フランス、ドイツなどではアストラゼネカのワクチンは打たないという人が出ており、ワクチン接種のペースが上がっていない。

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