2022年2月に中国北京で冬季オリンピックが開催されるが、このショートトラック競技に2018年の平昌オリンピック金メダリストの林孝俊(イム・ヒョジュン)=25=が中国の五星紅旗マークを着け、リンク上で韓国代表選手たちとレースを展開する笑えない場面が展開されることになった。林孝俊の所属事務所は6日「まだ選手として活躍できる時期に活動できないという困難と悔しさのため、林選手は中国への帰化を選択した」と発表した。中国は来年自国で開催される冬季オリンピックを前に、戦力強化に向け平昌で韓国代表を率いた金善台(キム・ソンテ)監督を2019年に司令塔として迎え、昨年は06年のトリノ大会で韓国代表として3冠王、14年のソチ大会でロシア代表として3冠王となったビクトール・アン(36、安賢洙〈アン・ヒョンス〉)をコーチに就任させた。今回彼らに続き現役の林孝俊まで迎え入れたことから、「中国に韓国代表チーム第2中隊が編成された」との声が相次いでいる。

 林孝俊は平昌オリンピック男子ショートトラック1500メートルで金メダル、500メートルで銀メダルを獲得した。翌年ブルガリアで開催された世界選手権でも4冠王に輝くなど、韓国代表では文字通りのエースだった。ところが2019年6月に鎮川選手村で練習中、後輩選手のパンツを脱がせた不祥事で大韓氷上競技連盟から資格停止1年の処分を受け、検察は同年12月に林孝俊を強制セクハラの容疑で在宅起訴した。林孝俊は昨年5月に一審で罰金300万ウォン(約29万円)の有罪判決を受けた。しかし昨年11月の二審では「当時、同僚選手たちが『練習が始まる前のふざけ合う雰囲気の中で事件が発生した』と陳述した点などを考慮すると、林孝俊の行動がセクハラに当たるとは考えにくい」として林孝俊に無罪を宣告した。しかし検察がこれを不服として上告したため、結論は今も大法院(最高裁判所に相当)の判断を待つ状況となっている。

 林孝俊は資格停止中の2019年11月、大韓氷上競技連盟を相手取って懲戒無効訴訟を起こし、それから1カ月後に裁判所は「一審判決が出るまで懲戒の効力を停止する」との決定を下した。しかし林孝俊は昨年5月の一審の刑事裁判で罰金刑が出たため訴訟を取り下げた。有罪判決が出たことから「一日でも早く懲戒の期間を終わらせて大会に出場すれば、オリンピックに出場するチャンスはまだ得られる」と考えたのだ。林孝俊の代理人のこの主張が正しければ、今年1月には懲戒が終わるはずだった。これについて林孝俊の代理人は「連盟側からは『まだ懲戒は終わっておらず、資格停止が続いている』としか言われなかった」「刑事裁判と懲戒問題のどちらも結論が出ていない状況で悩んだ末に、最終的に中国への帰化を決めたようだ」と伝えた。氷上連盟は「懲戒についての立場は明らかにできない」としている。

 世界最強の戦力を誇る韓国のショートトラック選手が他国の国籍を得てオリンピックに出場するのは今回が初めてではない。ビクトール・アンはトリノ大会で金メダル3個、銅メダル1個を獲得したが、その後膝の負傷や所属チーム解散などの影響で不振が続き、2010年にロシアに帰化した。韓国の男子ショートトラックはソチ大会でメダルなしの屈辱を味わった。

 林孝俊の中国帰化を巡ってはファンの多くが「韓国代表で活躍した選手が国籍まで変えられるのか」「韓国には二度と戻るな」などと批判する声が多くを占めているが、一方で「チャンスを求めて行くのだからがんばれ」と応援するファンもいる。しかし安賢洙に続いて今回またも冬季オリンピックのスター選手を送り出すことについては、誰もが共通して残念な思いを抱いているようだ。

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