町内の公園で夜の散歩をしていたら、青年たちが騒ぐ声が聞こえた。大学1年生か浪人生とみられる男性3人で、悪口も飛び出した。「お前、一生で家を買えると思うか?」「いや、半地下物件の家賃も払えるか自信がない」「月給をかき集めてもマンションは買えないんだって。俺たちどうやって暮らしていく?」「俺は心配なんてしていないさ。この公園にテントを張って暮せばいいだろう」「はははは!」--。笑っているのではなく絶叫だった。

 若者が「マイホームの夢」すら諦めた状況で、韓国土地住宅公社(LH)職員による土地投機問題に彼らはますますやるせなくなるばかりだ。地方のLH職員は親族や周囲の数十人を動員し、首都圏の新都市予定地に数十億ウォンの遠征投機までした。自治体の公務員、地方議会の議員、軍属も続々と投機の列に加わった。分譲権を狙った「土地分割」は基本で、道路、袋地、山野まで買い漁った。世宗市を設計した公務員出身者は「犬小屋を建てようと土地を買った」と言い放った。天井知らずで不動産価格は上昇する中、不動産が値下がりすると期待していた青年や庶民は胸をえぐられる思いだ。このコラムを書いている途中にも「無作為で電話した」という人物から「新都市の土地競売に関心はないか」という電話があった。全くあきれてしまう。

 政府は大統領と首相が「抜本塞源(抜本的な根絶)」「敗家亡身(不正に関与した人に身を滅ぼさせる)」など言っているが、後の祭りでこけおどしにすぎない。既に「捜査は失敗に終わった」と言われている。時間を稼いだ末、合同捜査本部を立ち上げたが、経済犯罪捜査を得意とする検察をそこから排除してしまった。捜査する意志は薄弱だ。

 一旗揚げようとする土地投機は基本的に個々人の問題だ。しかし、第一線の公務員に広範囲で投機ブームが生じたのは構造的な問題だ。何よりも政権のせいだ。

 政府は2兆ウォン以上が蒸発したライム・オプティマスファンド詐欺が発覚しても、捜査を先延ばしにしている。青瓦台・与党関係者の名前が挙がり、数十億、数百億ウォンの大金がさまざまなルートに流れた状況が明らかになったが、1年半たっても疑惑は解明されていない。ファンド詐欺を捜査してきた証券犯罪合同捜査団まで解体してしまった。大規模な経済犯罪にこれほど寛大な政権はなかった。

 蔚山市長選工作疑惑、月城原発1号機の経済性評価ねつ造など他の権力型犯罪の捜査が遅々として進まないことも公職者の綱紀が急速に崩壊する方向へと作用した。経済事犯にとっては死神のような存在だった検察はかかしのような存在へと転落した。法治と公正が上から崩れれば、現場で財政、権限、情報を握る公職者は誘惑にはまってしまう。LH問題は「公職綱紀の崩壊」という最悪の環境で起きたものだ。

 LH職員は「まさか」と思ったはずだ。被害者が数千人に達する前代未聞の「2兆ウォン蒸発」詐欺事件ももみ消そうとする政権が田舎の土地までかき回すことは少なくとも現政権のうちはないだろうと信じていたかもしれない。

 だからといって、今後政府が全国各地をいちいち調べることもないだろう。予備妥当性調査を免除するなどした地域の土建事業があまりに多く、下手につつけば、別のスキャンダルが露見しかねないからだ。

 民主党は今になって特別検事を導入し、国会議員の全数調査まで行うと言っているが、選挙が終わればうやむやになる可能性がある。投機犯をたくさん捕まえたからといって、政権にプラスになることもない。1年後には大統領選挙が控えている。やるふりだけして、LH職員と自治体の公務員数十人を処罰する線で事態の幕引きを図るシナリオが有力だ。

 万一政府が態度を変え、ライム・オプティマス事件を情け容赦なく暴けば、4年間にわたって不平等、不公正、不義がのさばってきた世の中は180度様変わりし、土地投機もなくなるかもしれない。しかし、LH問題の他人のせいにする文在寅(ムン・ジェイン)政権でそんなことは決してないだろう。経済に害を及ぼす腐敗と不公正は続き、若者たちの憂いはますます深まるばかりだ。

ユン・ヨンシン論説委員

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