サムスン電子は今年1-3月、半導体事業で売上高19兆100億ウォン(約1兆8500億円)、営業利益3兆3700億ウォンを上げた。売上高は前年同期を8%上回ったが、営業利益は16%も落ち込んだ。営業利益減少の要因は米テキサス州の半導体ファウンドリー(受託生産)ラインが寒波による停電で1カ月以上ストップしたからだ。しかし、日本経済新聞は「懸念材料は工場停止だけではない」と指摘した。なかなか縮まらない業界首位、台湾積体電路製造(TSMC)との技術力の格差、先端設備の不足、設備投資、世界情勢などが複合的に絡んでおり、容易には解決できないとの見方だ。

 サムスン電子の金奇南(キム・ギナム)副会長は今年3月、定時株主総会で「TSMCにいつ追い付けるのか」と問われ、「TSMCに比べ、シェア、規模の経済を可能にする生産能力、顧客数で不足なのは事実だが、先端工程の競争力は遜色ない」と答えた。しかし、金副会長の自信とは裏腹にサムスン周辺からはサムスンのファウンドリー事業の競争力に根本的な問題があるとの指摘が絶えない。先端半導体を大量発注するテクノロジー企業がサムスン電子の技術力と生産能力を信用していないのだ。半導体業界関係者は「アップル・クアルコムのような大口顧客はタイムリーにしっかりした新製品の供給を受けることが重要だ。検証されていないサムスン電子のファウンドリーに製品を発注する理由はない状況だ」と指摘した。

 後発走者が技術格差を克服するためには投資が必須だ。しかし、首位TSMCが格差を維持するため、攻撃的な投資を行っているのに対し、サムスン電子はそれに追い付けずにいる。TSMCは今年初め、280億ドル(約3兆600億円)の投資計画を表明したのに続き、先月には今後3年間に1000億ドル(約10兆9000億円)を追加投資すると発表した。サムスン電子は2019年、ファウンドリーをはじめとするシステム半導体の競争力強化に2030年までに133兆ウォン(約12兆9000億円)を投資し、業界トップになると宣言したが、TSMCはわずか4年間にそれを上回る資金をつぎ込む。日経はサムスンについて、「4兆円規模の投資を予定するものの、DRAMなど半導体メモリー向けが過半を占め、受託専業のTSMCと比べれば投資規模は見劣りする」と報じた。

 最先端工程でTSMCとの格差を縮められない原因としては、設備の確保失敗を挙げた。日経は「(TSMCがオランダASMLの先端設備を大量確保すると、)危機感を覚えたサムスンはトップの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が20年秋に、コロナ下にもかかわらず装置確保の直談判のためにオランダに飛んだ」とした上で、「足元では購入台数を増やしているものの、いち早く装置を確保したTSMCほどには生産技術を蓄積できていないのが現状だ」と分析した。

■スマートフォンの競争力低下も

 ファウンドリー事業不振がサムスン電子全体の競争力低下につながりかねないとの懸念もある。サムスン電子は自社のファウンドリーで生産したCPUとカメラ用イメージセンサー部品をスマートフォン「ギャラクシー」シリーズに搭載する。日経は「スマホで競合するアップルはTSMCにCPU生産を全量委託しており、TSMCとの技術格差はスマホ性能でのアップルとの格差に発展する」と指摘した。

 政治的問題もサムスン電子の不安要素として挙げられる。バイデン米大統領は最近、米国中心の半導体サプライチェーン再編を宣言し、中国の技術面での台頭をけん制する意向を表明した。政界と産業界からは21日に行われる韓米首脳会談をきっかけとして、サムスン電子が米国の半導体ファウンドリーで生産ライン増設に170億ドルを投じると発表するとの情報も流れている。しかし、米国でのライン増設がサムスンの将来を保証するものではないとの見方が優勢だ。TSMCが日本、米国と共に既に強力な反中連合を主導しているからだ。さらに、台湾と日本が米国の反中連合で先頭に立っているのに対し、韓国は米中の間であいまいな「二股外交」を展開している。半導体業界関係者は「米国が中国への先端設備輸出を禁止すれば、中国に工場があるサムスン電子とSKハイニックスが影響を受けかねない。サムスン電子にとって、最大の半導体輸出先である中国を無視することもできない状況だ」と分析した。

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