5年ぶりに新刊『韓国的なものはない』

 「韓国的なもの、韓国だけの固有の文化というものが果たしてあるのか、私は疑っています。重要なのは『韓国的な文化』ではなく、『質の高い文化』です」

 哲学者・卓石山(タク・ソクサン)氏(64)が帰ってきた。2000年の著書『韓国の正体性』で「(映画)『風の丘を越えて/西便制』よりも『シュリ』の方が韓国的な映画だ」という挑発的な主張をしていた同氏が、新刊『韓国的なものはない:クッポン時代を越えて』(出版社・開かれた本)を出した。クッポンとは過度な国粋主義・愛国主義を意味するインターネット上の新語だ。2016年『韓国の正体性2』以降、5年間にわたる沈黙を破ったわけだ。これまで何をしていたのかという質問に、同氏は「韓国人のための西洋哲学史の本を執筆するため引きこもって勉強していた」と答えた。

 タイトルだけ見ると、以前の本と矛盾しているようにも思える。しかし、同氏は「韓国ならではの優れた伝統文化があるとか、(アイドルグループの)BTS(防弾少年団)やBLACKPINKが韓国の優秀さを証明しているという過度な意味付けに反対するものだ」と語り、21年前と同じ脈絡だと説明した。「文化は人工植物です。移植して、水をやって、世話しなければならないものです。文化の中で重要なのは国籍ではなく水準であり、文化輸出ではなく輸入に多くの努力を傾けるべきです」

 輸入の方が重要だとは? 同氏は「文化とは、高い所から低い所へと自然に流れるものではなく、低い所から命がけで血が出るほどの努力して高い所の文化を持ち込み、発展させたもの」と説明、鞘(さや)の中に木綿の種を隠して持ち帰った文益漸(ムン・イクジョム、元から木綿の種を持ち帰った朝鮮時代の文官)を思い起こさせた。そのように苦労して文化を輸入しなければならない理由は「文化は音楽鑑賞や詩の朗読を超えて、時代の危機を突破することができる新しい思想や学問・価値を意味するからだ」と説明した。

 一般的に韓国固有の文化だと考えているものが、実際にはあまり「固有」ではないことも同氏は指摘した。「シャーマニズムはほかの所でも人類が無秩序を処理してきた方法の一つです。美術に見られる『無技巧の技巧』はかなり以前に唐で登場した概念です」。

 伝統に対するこだわりは建築では韓屋に対する過度な賛辞に現れているがが、オンドル(床暖房)ボイラーを設置して、バルコニーや多用途室が庭や広場の役割をするマンションこそ、既に韓国的な文化だと見なすことができるということです。「朝鮮時代初期に沖縄の水牛を在来種の牛と交配させて今の韓牛になったように、どんな文化であれ、入ってきてから長い年月が経過すると、その国の文化として定着したとする可能性があります」。今や韓国文化の独自性を無理に見つけようという強迫から脱して、文化の輸入と質の向上の方に一層努力を傾けるべきだということだ。

 同氏の名刺に書かれている肩書きは、意外にもキム・スンウ、キム・ナムジュ、イェ・ジウォンらが所属している芸能事務所「ザ・クィーン」の顧問だ。テレビの時事番組出演をきっかけに入ることになったというが、「主にやっているのは話し相手になること」と言った。そして、「原本用紙1500枚分の西洋哲学史執筆を来年から始める」と抱負を語った。

ユ・ソクジェ記者

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