中国国営メディアの「新華通信」韓国語版が少し前、河南省洛陽市で開かれた歴史再現イベントを紹介した。西暦5世紀ごろ北魏を治めた孝文帝と夫人の文昭皇后が、竜門石窟で侍従らに手伝われつつ焼香し、仏を礼拝する場面を再現したものだ。

 このプロジェクトを進めた竜門石窟研究院は、皇帝夫妻の礼拝場面を石に浮き彫りにした「孝文帝礼仏図」と「文昭皇后礼仏図」の人物像や当時の文献を参考にして俳優に服を着せ、写真と動画で再現した。1分51秒の動画では、石のレリーフ内の皇帝夫妻と侍従らが華やかな宮中衣装を着て彫刻の外へ歩き出てくるかのように見せる、躍動的な演出が目を引いた。念入りに考証したため、準備期間だけでも3カ月かかったという。記事では、皇帝夫妻のレリーフが盗掘に遭い、それぞれ米国カンザスシティのネルソン・アトキンス美術館とニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されている流出文化財だということも紹介していた。

 この行事を、単に中国の地域文化行事とはみなし難い理由がある。孝文帝という人物についての歴史的評価のためだ。北方遊牧民族の鮮卑出身で皇帝の位に就いた彼は、漢化政策を積極的に展開したことで有名だ。北方地域にあった首都を南方の洛陽へ移し、鮮卑族の言葉や服装など固有の習俗を禁止した。文物と制度を全て漢族のものに変えた。これにより、北魏は五胡十六国・南北朝時代の大国として君臨できたが。彼が属する鮮卑族はアイデンティティーを失い、漢族に吸収されていった。漢族文化の優越性と支配の正当性を主張するための素材として、孝文帝はまたとない良い材料というわけだ。

 中国が新疆ウイグル自治区や内モンゴル、チベットなど独立傾向が強い少数民族地域で押し付けている強圧政策のせいで国際社会から指弾されている昨今、中国当局が望む「少数民族のロールモデル」として孝文帝が1500年ぶりに「召喚」されたのではないだろうか。今回の行事は、隣接諸国の歴史と文化を自分たちのものにしようとする中国の「歴史工程」の一環ではないか-という疑念がある。

 韓国が、これを「他山の石」とすべき事情がある。韓国は5000年の歴史において中国の侵奪に耐え抜き、近代国家である大韓民国の樹立後は急速に経済発展と民主化を成し遂げた。だが中国は何としてでも韓国の歴史と文化を侵害しようとする歴史工程を継続している。「中国夢」を唱える習近平政権時代になって、そうした流れは一段と強まる様相を見せている。

 韓服やキムチを「自分たちの文化遺産」だと言い張る一部の中国人の強弁や、白頭山を「中国王朝の領土・長白山」に変えようとする最近の中国当局の動きがその代表的な例だ。いつ、いかなる方法で中国の歴史工程が試みられるのか、警戒を緩めてはならない。

鄭智燮(チョン・ジソプ)記者

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