9日午後、ソウル市東大門区のソウル市立大博物館を訪れた。正門には「平壌の時間」と題する展示会のポスターが張られていた。「写真で見る北朝鮮の都市」という副題で今年10月中旬まで開かれる展示会だ。現在は博物館内部の漏水で一時休館しているが、コロナ下でも展示会は7カ月余りにわたって開かれてきた。ところが、展示物には北朝鮮の首都・平壌を一方的に美化する物が多く、論議を呼んでいる。展示物の説明には平壌を「理想的な社会主義都市」と記したり、平壌の都市景観を「スペクタクル(壮観)」と紹介している部分もあった。

 本紙の取材を総合すると、展示会は4つのテーマに分かれているが、特に第4のテーマである「スペクタクル平壌」に論議を呼ぶ表現が多数登場する。約2メートルの高さの展示物には、「韓国戦争(朝鮮戦争)の激戦地だった平壌は北朝鮮のどの都市よりも深刻な被害を受けた」とし、「平壌はそれを契機に理想的な社会主義都市に生まれ変わった」と書かれている。また、「北朝鮮式社会主義建設と共に、民族伝統主義を掲げ、韓屋(韓国の伝統式住居)の形をまねた記念碑的建造物が建てられた」とし、「主体(チュチェ)思想を通じ、民族主義様式の巨大な記念碑を建てたことで、平壌都心のスカイラインが完成する」と説明している。

 金正恩(キム・ジョンウン)の功績を称える部分も登場する。「最先端化、大型化と共に速度を強調する平壌の姿と人々の日常を展示した」「金正恩時代に平壌は速度を掲げ、公園、百貨店など生活文化施設と緑地拡充中心にスペクタクルが再現されている」などと北朝鮮側の主張を一方的に代弁したかのような説明が散見される。

 ソウル市立大は昨年11月に同展示会を開始する際、約120年間の平壌の変化を写真と地図などで展示する企画展だと説明した。展示会を主管した市立大博物館は「2018年から平壌経済研究所など関係機関から資料を収集してきた」とし、「総長の決裁を受け、展示会を開催した」と説明した。ソウル市によると、同展示会には大学の予算9100万ウォン(約893万円)が投じられた。

 市立大関係者は「平壌について紹介する部分は大部分がソウル市、統一部の研究資料、大学教授らの論文、文学などに登場する表現を抜粋、引用したものだ」としたほか、「『スペクタクル平壌』という表現は他の貧しい北朝鮮の都市と比較し、平壌の姿がショーウインドー式の演劇舞台に近いという点を強調するための二重の意味がある」と説明した。しかし、実際の展示会を観覧すると、資料の出所が明らかにされていない。

 昨年市立大の博物館長を務めていたS教授は今年2月にマスコミのインタビューに対し、「18年の(南北)首脳会談など南北和解に向けた劇的な瞬間があった。北朝鮮の心臓に等しい平壌を知ってもらう展示を行うことも意味がある」と述べている。本紙がS教授の立場を照会したところ、市立大関係者は「S教授は館長の任期が終了し、現在は『安息年』で連絡が取れない状態だ」と回答した。ソウル市は「市の予算を支援せず、展示の企画や構成には関与していない」との立場だ。

 市立大4年生のPさんは「北朝鮮の立場で強調したい断面ばかりを見せる展示会だ」と話した。在英北朝鮮大使館の元公使、太永浩(テ・ヨンホ)国会議員(国民の力)は「金日成(キム・イルソン)回顧録、(ソウルで開かれた)P4G首脳会議の開幕式に平壌・綾羅島の映像が使われた論争に続き、ソウル市内で平壌のイメージを美化する行事が開かれており、とんでもない」と話した。

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