米国が中国の少数民族ウイグル族弾圧を「大量虐殺(genocide)」と規定し、全方位的な圧力を加えている中、中国政府が米国製の装置をこっそり持ち込み、数年間にわたりウイグル族の遺伝子(DNA)情報を収集していると、米紙ニューヨーク・タイムズが13日(現地時間)、報道した。国連人権委員会と人権団体は、中国が2016年から新疆ウイグル自治区のウイグル族の監視・統制を強化するため遺伝子情報を収集していると暴露してきたが、これに密輸入した米国製機器が使用されたということだ。

 同紙は独自入手した中国政府の文書と契約書を根拠に、米国のバイオテクノロジー分析機器メーカー「サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)」と「プロメガ(Promega)」の複数の遺伝子情報収集装置が、最近まで新疆ウイグル自治区に供給されたと報じた。

 遺伝子情報収集装置は2019年、ドナルド・トランプ政権の中国向け輸出禁止品リストに入れられた。中国はその後、さまざまな方法でこれらの機器を手に入れたものと見られる。米国企業が中国政府に協力していない状況で、中国の民間企業がブローカーを通じて米国製機器を購入した後、中国政府に「上納」した可能性が高いということだ。サーモ・フィッシャーは同紙に「新疆ウイグル自治区に装置が供給されないよう、販売先確認を徹底的にしたが、購入者リストにない組織に装置が供給された」と説明している。

 中国当局は2016年からウイグル族の遺伝子情報を積極的に収集してきたと言われている。「無料健康診断」の名目でウイグル族の住民を集め、米国製装置を使ってこれらの遺伝子情報を得ただけでなく、顔をスキャンしたり、声を録音したり、指紋を採取したりしたということだ。中国国営・新華社通信によると、2016年から2017年にかけて新疆ウイグル自治区の住民が無料健康診断を受けた回数は3600万回に達したという。新疆ウイグル自治区の全人口は2500万人なので、1人当たり多ければ2-3回健康診断を受けた計算になる。事実、あるウイグル族の女性は2017年から2019年までに5回「健康診断」を受けたと証言した。

 ウイグル族の遺伝子情報により構築されたDNAデータベースは、中国当局がウイグル族を追跡するのに使用されると推定されている。遺伝子情報を利用すれば、指紋よりもはるかに効率的に身元確認ができるという利点がある。米国の科学誌ニュー・アトランティスは「遺伝子情報はその人の基本的な身体特徴だけでなく、今後の病気にかかるリスク、行動様式なども把握できるため、この情報を奪われるということは想像できないほど大きな意味を持っている」としている。

ホーム TOP