▲スリランカ人のディムドゥ・ヌワンさんは「一生懸命仕事をして韓国国籍を取るのが夢だった」とし「私がミスしたのにとても助けてくれた韓国人にはひたすら感謝」と語った。/写真=シン・ジイン記者

 2018年10月7日。スリランカ人のディムドゥ・ヌワンさん(30)は、3年前のその日をまだ忘れられない。彼は「ソウルームンサン高速道路」の工事現場(京畿道高陽市徳陽区)で働く鉄筋工だった。午前10時30分ごろ、工事現場の入り口に「赤い風灯(ランタン、紙製の熱気球)」が置かれていた。近くの小学校から飛んできたものだった。「韓国ドラマで見た風灯を実際に見たのは初めてだった。スリランカには風灯がない」。物珍しくて、ポケットからライターを出して火を付けると、風灯は飛んでいった。悪夢の始まりだった。風灯は300メートル飛び、大韓送油管公社の貯油所近くに落ちた。枯れ草に火が燃え移り、さらに貯油タンク内にまで火が飛んで、タンクが爆発した。計110億ウォン(現在のレートで約10億8000万円。以下同じ)に達する財産被害が発生した。

 ディムドゥさんは、この事件で3年にわたり裁判を受けている。昨年12月に一審で罰金1000万ウォン(約99万円)を言い渡されたのに続き、6月15日に控訴審の判決言い渡しが予定されている。韓国警察は、大火事を起こした重大な過失があるとしてディムドゥさんに大失火罪を適用したが、検察は証拠が足りないとして失火の罪だけで在宅起訴した。当時、「風灯一つで貯油タンクが爆発するほどなら、公社側の安全管理の方が問題」という指摘もあった。

 最近、京畿道竜仁市のカフェで記者と会ったディムドゥさんは、当時勤めていた会社(錦豊建設ENC)に事件後もそのまま勤めていると語った。会社側は、起訴されて裁判を受けている外国人労働者を解雇せず、弁護士の選任にまで乗り出したという。ディムドゥさんは「社長さん、所長さんは『心配するな。大丈夫だ』と言ってくれた」と語った。会社が弁護士のつてを探していると、チェ・ジョンギュ弁護士など6人が「無料公益弁論」を引き受けたいと名乗り出た。

 錦豊建設ENCのチョ・ジョンヒョン理事(取締役)=47=は「事件が起きてから1週間後、工期を繰り上げないといけない状況だったが、ディムドゥはあんな大事件に直面していても、一切感情的にはならずに木工から鉄筋まで多方面で黙々と仕事をした」「こんな友人を、どうして会社の利益だけ考えて放り出せるか」と語った。またウ・チャンウ管理部長(50)は「ディムドゥは外国人の中で一番年若い方だが、およそ40人いる外国人の同僚の面倒を見る長兄のような役割だった」とし「誰かが体調を崩して食事ができなくなると、自分の昼休みを使ってタクシーに乗り、市内で薬を買ってきた友人」と語った。ナ・ヨンファン代表理事も「ディムドゥは家族」と言い切った。同僚がディムドゥさん支援に乗り出したのは、彼が「悪意を持って事件を起こしたわけではない」という確信があったからだという。ディムドゥさんは今、京畿道竜仁市のトンネル発破の現場で働いている。コンクリート資材を運び、ホースを張る仕事だ。

 2015年に一人で韓国に渡ってきたディムドゥさんは、裁判中は出国が禁止され、6年間母国を訪れることができていない。心臓病を患う母親マルガンディさん(52)、脳神経の問題で手の震えがひどい父親ジャヤウィルさん(55)のことをよく思い出すという。事故直後の1カ月間は寂しくて一晩中泣き、今も頭痛と不眠症に苦しんでいるという。「『ディムドゥさんの誤りではない』という世論もある」と言うと、彼は「そう言ってくれるのはありがたいが、間違いは間違いだ。ただ、わざとやったのではないということだけ、分かってもらえればうれしい」と語った。

 彼の稼ぎは月に200万ウォン(約19万7000円)ほど。罰金1000万ウォンも、一生懸命お金を集めれば払える金額だ。彼が心配しているのは金額よりも、罰金刑そのものだ。裁判が終わって罰金を払えば出国禁止が解かれ、スリランカに戻ることができるが、罰金刑の前科があるせいで就職ビザを再度取ることはできない。韓国に戻れなくなるのだ。

 韓国が好きで国籍取得を夢見ていた彼の中に、まだ韓国は「ありがたい国」として残っている。ディムドゥさんは別れ際にこう語った。「韓国に来てお金を稼いでる立場で、こんな大きな問題を起こしてしまって申し訳ない。仕事も一生懸命やって、きちんと生活しようと思っていたけど、なぜこれを飛ばしたのか分からない。裁判が終わったら、スリランカに行って両親の顔を見たい。私は間違いを犯したけれど、弁護士さん、会社の同僚、みんなとても助けてくれて感謝している。韓国人の皆さん、ありがとうございます」

シン・ジイン記者

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