「先生が他の子たちの前で私を叱って、私の人権が侵害されました」

 ソウル市内のある初等学校(小学校)に勤務する教師(31)が今年5月、遠隔授業に度々欠席する5年生の児童を呼び「遠隔授業もやらず宿題もしないんだったら何のために学校に来ているのか」と叱ったところ、上記のような抗議を受けたという。この児童は「今後もこうなさるのであれば国家人権委員会に陳情します」とも言ったという。教師は「体罰を行ったわけでもないのに、こんな抗議を聞いて戸惑った」「実際にこの児童が陳情したら、人権委は私に問題があったと判断するだろう」と語った。

 最近は学校現場の教師たちから「国家人権委員会は10代の児童・生徒たちにとって『万能の訴え窓口』になった」といった嘆きの声が聞かれる。10代の子供たちがちょっとしたことで教師や学校について人権委員会に陳情を行うケースが増えているというのだ。人権委員会が15日に公表した統計データによると、昨年受理された陳情のうち陳情者の年齢が確認できるケースの15%(509件)が「10代の青少年(20代未満)」によるものだったという。2010年にはこの年代からの陳情は1.4%だった。10年で10倍以上に増えたことになる。

 児童・生徒たちが人権委に陳情を行う理由は「教室の外に立たされた」などささいなことから「朝からスマートフォンを取り上げられた」など多種多様だ。教師たちは「子供たちは普通なら考えられないことで人権委員会に訴えを起こし、人権委もごく日常の注意レベルのことにまで『人権侵害』として修正を勧告することがよくある。これでは子供たちをまともに指導することなどできない」と語る。

 実際に人権委はこれまで教師による注意のやり方について、その多くを「人権侵害」と判断してきた。国家人権委員会釜山人権事務所は2018年「相手に許しを求める」「反省文作成」「違反したことを書いたプラカードを持って立つ」といった教師の指示について「児童・生徒たちの良心の自由を侵害する恐れがある」と判断した。「教室の外で立たされる」についても「児童・生徒たちの学習権と安全権のどちらも侵害する懸念がある」との判断が下されている。

 人権委は昨年、今も多くの学校で行われている「朝スマートフォン回収、夕方返却」について「憲法上、個人の行動の自由を侵害している」との判断を下した。人権委は陳情を行った生徒の手を上げ「回収希望者に限る、あるいは授業中にのみ回収し、昼食時間には返却せよ」と勧告した。

 児童・生徒たちが人権委に訴える主な理由の一つは、その効果が大きいからだ。陳情が受理され人権委が調査を開始すれば、学校は釈明の手続きを行い改善策を提出しなければならない。ソウル市恩平区の初等学校で3年生の担任をしているある教師は「最近の子供たちは普通なら人権侵害とは考えられないことであっても、取りあえず人権委に訴えるようだ」と語る。もちろん却下あるいは棄却されるケースも多い。昨年人権委が受理した9312件のうち、実際に勧告などが行われたのはわずか8%にすぎなかった。

 漢陽大学教育学科のパク・チュホ教授は「最近の10代は自分の権利を非常に重視するので、小さな利益でも侵害されればすぐ問題提起を行う個人主義的な傾向が見られる」とした上で「彼らは共同体内部で問題を解決するよりも、外部に知らせて他者に解決させる方法の方がもっと簡単で合理的と考えている」と説明した。

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