ある飲食店のトイレで料理人が用を足した後、手も洗わずに厨房に入っていくのを見たことがある。その手で作った料理を食べたと思うと気持ち悪かった。有名なコムタン専門店の得意客が偶然見かけたというのだ。片付けというのは大きなたらいに入った汚れた水に洗い物の食器を少しだけ漬けて取り出すだけだった。従業員はその食器にコムタンを盛り付け、客のテーブルへと向かった。

 インターネットで「不潔な店」と検索すれば、不衛生な飲食店に対する告発があふれている。つまようじが入ったキムチは他人が食べた物をもう一度出したことを示している。皿をふいてテーブルや椅子までふくのはふきんなのか雑巾なのかという訴えもあった。人が話すたびに唾液の飛沫が360個飛び、くしゃみならば1回で4万個の飛沫が8メートルも飛ぶという。それでも従業員がマスクをしている飲食店はまれだ。コロナの影響でマスクをするようになったのは幸いだ。

 大根を洗うたらいに自分の足も突っ込み、大根を洗っていたたわしで足まで洗っていた飲食店従業員の映像が最近インターネットに拡散した。一緒にいた女性はそれを見て止めもしなかった。いつもそうしているという意味だ。その店でその程度のことは大したことでもないのだろう。今年3月に中国で裸の男が大量の白菜を漬けている映像が拡散した際には、飲食店に行くたびに「中国製キムチを使ってはいないか」と気になった。今は「足に洗ったたわしで洗った大根ではないでしょうね」と尋ねなければならないありさまだ。

 不潔な飲食店は米国でも問題になった。あるハンバーガー店の従業員は鼻くそを食材に投げ入れているところを隠しカメラに撮られた。ニューヨークで飲食店100カ所の衛生状態をチェックしたところ、87カ所でゴキブリやネズミが見つかったこともある。米国の市民社会は断固対応することで問題を解決した。ニューヨーク州選出の上院議員は本気で不衛生なレストランの店名を公表した。韓国でもそうすべきだ。

 世界最高の権威を誇る「ミシュランガイド」には味が良いだけで載るわけではない。清潔さまで評価対象になっているという。格安で楽しめる名店を紹介する「ビブグルマン」にリストアップされたソウルのヘジャンクク(内蔵スープ)専門店に行ってみると、テーブルに油汚れ一つなく、容器もスプーンも清潔だった。厨房を開放しており、内部がはっきり見えて安心できた。味さえよければ汚いことには目をつぶってきた時代は終わりを告げるべきだ。スープが入った容器に親指を入れて持ってくるのだけはやめてもらいたい。それを直すことは難しいことだろうか。「味は最高ではなくとも、衛生には自信あり」という飲食店があれば、すぐに行きつけの店にしたい気分だ。

キム・テフン論説委員

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