▲写真=大韓アーチェリー協会

 東京五輪アーチェリー女子韓国代表の安山(アン・サン)選手(20)は30日、同五輪で3つめの金メダルを手にして「3冠」に輝いた後、「イシュー(論争)になっていることについては知っていたが、できるだけ気にせず競技に集中しようと努めた。たくさんの応援のおかげで良い成績を出すことができたと思う」と心境を語った。安山選手が言った「イシュー」とは、同選手の「ショートカットヘア(短い髪)」をめぐってインターネット上で繰り広げられている「フェミニズム論争」のことだ。男性が中心の一部コミュニティ-・サイトから発せられた「急進フェミニストだからショートカットにしたのではないか」という主張が、この論争を触発した。

 ロイターやAFP通信など主要外信各社も、一躍世界のスポーツ界のスターに浮上した安山選手に対して韓国で行われている「フェミニズム論争」を大きく報道している。英BBC放送のローラ・ビッカー・ソウル特派員は30日、短文投稿ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「ツイッター」に「安山がネットでたたかれている」「韓国でフェミニズムは否定的な意味の言葉になった」と投稿した。

 安山選手の「ヘアスタイル」に関するフェミニズム論争について、ロイター通信は「安山の短い髪が反フェミニストたちの反感を買っている」「このネットたたきの背景には、若い韓国人男性の反フェミニズム感情がある」と報道した。AFP通信は「韓国は世界12位の経済大国だが、女性の人権が脆弱(ぜいじゃく)な男性支配的社会」と伝えた。

 安山選手のフェミニズム論争は、あるネットユーザーがSNSのコメントで「なぜ髪を(短く)切るんですか?」と質問したところ、同選手が「その方が楽だから」と答えたことが知られて以降、広がったものだ。この内容が28日から一部の男性中心コミュニティー・サイトに広がり、安山選手がかつてSNS上に書いた「ウンエンウン(小声でつぶやいた時の音)」「5兆5億(精子の数になぞらえて、何かが非常に多いことを意味する言葉)」などの表現が「男性嫌悪」という批判につながった。一部の男性は「その単語は男性をさげすむ時に使う言葉だ」と主張しているが、そうした意図を知らないまま使う人もいる。こうしたことを土台に、「安山の五輪金メダルをはく奪すべきだ」という主張まで広がり、批判を招いた。

 この騒動に政治家たちも立ち上がった。与党・共に民主党の白恵蓮(ペク・ヘリョン)最高委員は30日、「外信は選手たちの不屈の闘魂と努力を報道するのではなく、安山選手がネットでたたかれているという記事を大きく取り上げている」「国家的な恥だ」と言った。正義党の沈相奵(シム・サンジョン)議員もフェイスブックに「私たちは安山選手の堂々としたショートカットのラインに共に立って応援する」と投稿した。SNS上には安山選手を支持するための「ショートカット写真」も相次いで投稿されている。

 大韓アーチェリー協会のホームページには30日、安山選手をめぐるフェミニズム論争に関する書き込みが約9000件掲載されている。28日に「フェミニズム論争」が浮上してからたった三日間で書き込まれたものだ。「一部男性の分別のない攻撃から安山選手を守ってほしい」という文がほとんどだ。

 女性家族部は30日、「どのような状況でも、女性嫌悪的表現や人権侵害的行為があってはならない」という見解を出した。また、「韓国女性政治ネットワーク」など29の女性団体は共同の論評を通じて「『ショートカットだから』『フェミニストだから』と言って攻撃の対象になるのは、2021年の韓国社会にまん延している嫌悪と差別を示している」「フェミニズムの歪曲(わいきょく)された烙印(らくいん)と女性嫌悪の拡散責任は(票を得るためにこれに同調した)与野党の政治家立ち全員にある」と述べた。

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