萬物相
【萬物相】「双子大国」韓国
古代ギリシャでは双子が生まれると、一人の女性が二人の男性と関係して生まれた不貞の証拠だと考えた。こうした誤解が物語となったのがヘラクレス神話だ。ゼウスは、アンフィトリオンが家を空けると彼に変身して妻を欺いて床に就いた。翌日、アンフィトリオン本人が帰ってきて床に就いたため、ゼウスの息子ヘラクレスとアンフィトリオンの息子イフィクレスが一緒に生まれた。韓国では、兄妹の双子は前世で夫婦関係にあったとする俗説がある。パク・ワンソの小説『都市の凶年』には、双子の兄妹として生まれた孫を持つ祖母が、孫娘を孫(兄)の未来を台無しにする子だと軽視するシーンがある。作家はこれを通じて、双子の妊娠について無知だった時代を批判した。
われわれは多産を祝福と考える伝統を持っている。朝鮮王朝時代には、三つ子を産めば国が出産祝い金を贈ったという記録がある。1977年に生まれた四つ子はテレビCMにも出演した。1989年に仁川で生まれた四つ子が看護大学に進学すると、子どもの生まれた病院が授業料を肩代わりし、卒業すると看護士として採用したケースもある。
出生児が急減し、今や四つ子とまで言わなくとも双子さえ生まれれば、社会全体が喜ぶ。妊娠・出産バウチャー、出産休暇、産後ヘルパーの支援など、国の支援も1人の子どもを妊娠したケースに比べて2倍近くにまで広がる。双子を育てる親の苦労を考えれば、当然行うべき支援でもある。
■韓国の合計特殊出生率0.92人でOECD最下位、日本は?
双子の出産比率がここ40年間で5倍近くに急増したという。1981年に出生児1000人当たり5組にすぎなかったのが、2019年には22.5組にまで増えた。世界の双子出生比率が1000人当たり12組であることを思うと、韓国は世界平均の2倍に当たる「双子大国」というわけだ。晩婚で初妊娠が遅れ、不妊が増えている。不妊夫婦が人工受精や試験管で子どもを持つようになれば、双子の確率は高まる。以前なら子どもに恵まれないと諦めていたわけだが、最近では夫婦が医学の助けを借りて積極的に乗り出したことから生じた変化といえる。これを見つめる世間の視線も肯定的に変化してきている。
ヘラクレス神話が双子に対する無知だけを明らかにしたわけではない。子どもを丹念に育てた当時の社会像も垣間見ることができる。アンフィトリオンはヘラクレスに乗馬と戦車を教え、賢者ケイロンは教育を担当した。弓術や剣の扱い方も伝授した。おかげでヘラクレスは快楽を避け、美徳を重要視する大人へと成長した。2000年には63万人だった新生児が、19年からは30万人を下回ってしまった。子ども一人一人は、まるで日照りの際に降り注ぐ雨のように大切だ。従って双子が生まれれば歓喜の声を上げるようになるのは当然の成り行きだ。
金泰勲(キム・テフン)論説委員