国際原子力機関(IAEA)は20日(現地時間)「北朝鮮でプルトニウムの分離やウラン濃縮などの核開発が全速力で進んでいる」と警告した。ところが文在寅(ムン・ジェイン)大統領は翌日に行われた国連総会で「南北米の3者あるいは南北米中の4者が集まり、韓半島での戦争終結を同時に宣言しよう」と呼びかけた。北朝鮮が最近ミサイルを発射するなど相次いで挑発行為を続けていることには言及しなかった。

 IAEAのグロッシー事務局長はオーストリアで開催されたIAEAの総会で北朝鮮による核開発に言及し「国連安全保障理事会決議に対する明白な違反だ。北朝鮮は核関連の問題解決に向けIAEAと直ちに協力すべきだ」と訴えた。最近になって北朝鮮が核施設を再稼働している兆候が相次いで捕捉されていることに懸念を示した形だ。米国務省のエリカ・バークス・ラグルス国際機関担当も国連総会を前に行ったブリーフィングで「米国は北朝鮮によるミサイル発射を非難する。このような動きは国連安保理違反だ」とした上で「他国にも制裁を強く実行することを求める」と述べた。米国など国際社会が北朝鮮による高度な核開発を深刻に受け止めていることがわかる。

 しかし文大統領はニューヨークで開かれた第76回国連総会での演説で「終戦宣言こそ韓半島で和解と協力の新たな秩序を形成する重要な出発点になるだろう」と訴え、改めて終戦宣言を呼びかけた。文大統領は昨年の国連総会でも「韓半島非核化および恒久的な平和を開く」として終戦宣言を提案したが、今回はこれよりもやや具体化した内容だった。文大統領は「韓半島終戦宣言に向け力を結集することを改めて訴えたい」「終戦宣言が実現した時、非核化の不可逆的な進展と共に完全な平和が始まることも可能だ。韓国と共に北朝鮮に引き続き協力の手を差し伸べることを国際社会に期待する」とも述べた。

 その一方で北朝鮮に対しては「地球共同体時代に見合った変化を準備しなければならない」と呼びかけ、南北離散家族再会の早期推進、東北アジアにおける感染対策や保健協力体などを通じた感染症・自然災害への対応を求めた。来年5月に任期を終える文大統領は「韓半島平和のスタートは常に対話と協力によるものであり、南北間、米朝間対話の早期再開を求める」「相生と協力の韓半島実現に向け残りの任期も最後まで最善を尽くす」と述べた。青瓦台(韓国大統領府)の関係者は「今年は南北による国連加入30周年でもあるため、北朝鮮も共に終戦宣言に合意し良いモメンタムを形成しようというメッセージだ」とコメントした。

 しかし米国のバイデン大統領は国連総会での演説で韓半島問題にはわずかしか言及せず、ニューヨークを訪問した文大統領との会談も実現しなかった。バイデン大統領は「我々は韓半島の完全な非核化を促すため、真摯で持続的な外交を模索している」として原則的な内容しか語らなかった。演説後、バイデン大統領はオーストラリアと英国の首脳と相次いで会談した。さらに24日にはワシントンでクアッド4カ国とはじめて対面での首脳会談を行い、その席で日本の菅義偉首相らと会う。文大統領はニューヨークでの2泊3日の滞在中に英国、ベトナム、スロバキアの首脳と会談した。

 青瓦台の朴洙賢(パク・スヒョン)国民疎通主席はあるラジオ番組でのインタビューで「今は伝統的な4強外交も重要だが、多者外交によっても国益を得なければならない」との考えを示した。ある韓国政府関係者は「韓米首脳会談はすでに5月にワシントンで行ったので、まだ会っていない首脳に先に会うというのが米国の考えだった」と説明した。文大統領夫妻は韓国戦争当時の韓国兵と米兵の遺骨送還式に出席するためハワイに立ち寄り、23日に帰国する。

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