現代自グループは来年から、米国で電気自動車を生産する計画だ。現在は韓国国内の工場で生産して輸出・販売しているが、今後は現地販売分は現地工場で生産することになる。これにより、現代自のアラバマ工場と起亜のジョージア工場では内燃機関車の生産ラインの一部が電気自動車専用の生産ラインへと転換される。

 業界では、これを皮切りに現代自が電気自動車の現地生産・供給体系を拡大すると予想している。米国の電気自動車市場が急速に成長している上、米国政府が現地で生産される製品へのインセンティブを強化しているからだ。

 現代自が電気自動車の生産の一部を海外へとシフトする一方、外資系企業の電気自動車生産はなかなか韓国には割り当てられない。韓国に生産拠点のあるゼネラルモーターズ(GM)とルノーグループは、生産コストが高いことを理由に韓国の工場に電気自動車の生産を割り当てていないのだ。電気自動車への転換が加速化し、世界の自動車産業が活況を呈する中、韓国では電気自動車生産の空洞化現象が起きるとの懸念が出ている。

 米国GMのナンバー2、スティーブ・キーパー海外事業部門社長の訪韓を控え、業界では韓国GMに新たな電気自動車の生産が割り当てられるかどうかに注目した。GMは将来的に電気自動車メーカーに転換すると発表したが、韓国の工場では依然として電気自動車の生産計画がない状態だ。

 しかし、キーパー氏は12日、「5年以内に韓国市場に10種類の電気自動車を紹介する」とした上で、それらの新車種は全て輸入すると明らかにした。韓国の工場で電気自動車を生産する計画もないと述べた。通常であれば、本社が生産台数を割り当てれば2-3年かけて関連の生産設備を整え、その後本格的に生産に入るため、この点を考慮すると今後2-3年以内に韓国GMの工場で電気自動車が生産される可能性はないということになる。

 ルノーグループの韓国事業場であるルノーサムスンにも、電気自動車の生産は割り当てられていない。韓国自動車産業協会は「韓国GMやルノーサムスンなどの外国企業は、2025年まで電気自動車の生産計画がなく、2030年まで生産は不可能だ」として「10年後の2030年までに韓国の自動車業界が生産できる累積台数は300万台以内」と指摘した。内燃機関車の時代が急速に没落する中、韓国の電気自動車の生産能力は時代に追い付けずにいるわけだ。

 韓国で電気自動車生産の空洞化を引き起こす最大の要因としては、硬直した労働市場構造が挙げられる。電気自動車は内燃機関車よりも必要部品の数が少ない上、高度な自動化設備によって生産されるため、必要な労働力もその分少なくなる。GM、フォルクスワーゲン、ダイムラーなど世界の完成車メーカー各社が電気自動車への転換を発表するとともに大々的なリストラに乗り出したのもこのためだ。

 しかし、韓国の雇用市場は基本的に解雇が不可能であり、完成車メーカーの強硬な労働組合は雇用維持はもちろんのこと待遇改善も求めており、電気自動車への転換は遅々として進まない。実際にGMとルノーグループは生産コストの高さを問題視し、韓国への追加の生産割り当てを先延ばしにしている。

 内燃機関車と比べれば電気自動車の生産に必要な労働力は少なくなるが、電気自動車生産に伴う経済的な波及効果は少なくないと予想される。このため米国や欧州、中国など主要国の政府は電気自動車の生産拠点を自国に誘致するためにさまざまな誘引策を打ち出している。

 自動車業界の関係者は「これまで韓国の完成車の生産規模はかなり大きかったため、国内の零細部品メーカーも『規模の経済』の恩恵を受けて生き残ってきたが、電気自動車を皮切りに完成車の生産が海外にシフトし始めれば、投資の余力がない部品メーカーが真っ先に打撃を受けるだろう」として「自動車産業の堅固な生態系を維持するためにも、国内の電気自動車の生産規模を一定水準以上に維持すべき」と指摘した。

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