▲中国で初めて有料運行する自動運転タクシーが26日、北京市大興区の道路を走っている様子。北京市はこの前日、大興区北京経済技術開発区60平方キロメートルの地域内で自動運転タクシーの有料運行を開始した。写真=パク・スチャン特派員

 11月26日、中国・北京市大興区亦庄地区にある地下鉄駅前。携帯電話アプリを利用してタクシーを呼ぶと5分後、白いスポーツタイプ多目的車(SUV)1台が記者の前に止まった。

 「お待ちになりましたか?」運転席に座っていたチャンさんがあいさつし、「シートベルトをお締めください」と言った。車のスピードはすぐに時速40キロメートルまで上がったが、チャンさんはハンドルに手で触れていなかった。運転手が介入することなく自動運転が可能な「ロボットタクシー」だからだ。チャンさんの役割も運転手ではなく「安全要員」だ。

 北京市では25日、中国で初めて自動運転タクシーの有料運行を開始した。北京CBD(中心業務地区)から車で20分離れた亦庄北京経済技術開発区60平方キロメートルの地域内でのことだ。ソウル市鍾路区・中区・西大門区を合わせた面積より広い情報技術(IT)企業密集地域を訪れると、街中には中国のポータルサイト大手「百度(バイドゥ、Baidu)」と、自動運転企業の「小馬智行(ポニー・エーアイ、Pony.ai )」という2社の自動運転タクシーを見かけた。

 

 運転席にいたチャンさんは「自動運転モードでは割り込みをしないため、出退勤時間にはやむを得ず人が(運転に)介入することもあります」と言いながらも、「初めは自分で車を運転するよりも気を使いましたが、今は慣れました。車が込む時間帯を除けば、技術は成熟段階に入ったと思います」と話した。

 車は18分で目的地に到着した。最高速度40キロメートルの都心区間を平均時速23キロメートルで走行したわけだ。安全要員のチャンさんがハンドルに手をかけたのは降車位置を微調整する時だけだった。本来払うべき料金は47元(約840円)で、一般のタクシーより高いが、割引政策のためバス代より少し高い2.4元(約40円)を払って車を降りた。チャンさんは「今年5月に無料でデモンストレーション運行したが、最近は昼間だけで60人以上を乗せ、車が止まっている暇がありませんでした」「有料になっても割引政策によりタクシー代がシェアサイクルの利用料金並みなので、乗り続けるという人が多いです」と語った。

 目的地まで7キロメートルを行く間に2回急ブレーキがかかったが、車線変更や方向転換などは一般のタクシーと何の違いも感じられなかった。走行途中、左車線からの乗用車に突然割り込まれると、タクシーは速度を落として避けた。さらに、ハザード・ランプをつけて後ろの車に警告したりもした。前の座席の背もたれに付いているモニターには周辺の物体が乗用車・オートバイ・人まで区別して表示されていた。

 まだ指定された場所のみでしか乗り降りできず、途中で目的地を変えることもできない。車そのものの価格を除き、車1台にかかるレーダーなどの装備費だけで170万元(約3000万円)に達すると言われており、経済性でメリットが出るのは時間がかかるものと見られる。それにもかかわらず、百度、阿里巴巴(アリババ、Alibaba)、京東(ジンドン、JD)などの大手IT企業はもちろん、小鵬(シャオペン、Xpeng)などの電気自動車メーカーも自動運転車市場に参入しており、中国の大都市で自動運転タクシーが主流になるという見通しが有力だ。北京以外に上海市、広東省広州市、河北省滄州市で自動運転タクシーを試験運行している百度は、来年初めに上海市、広州市でも有料運行を開始し、2025年までに65都市、2030年までに100都市で自動運転タクシーを運営する計画だ。

北京=パク・スチャン特派員

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