文在寅(ムン・ジェイン)政権の「脱原発の黒幕」の裏側がまた暴かれた。文政権が脱原発を推し進めるために月城原発1号機の経済性評価を操作していたことが監査院の監査で明らかになったのに続き、今回は主務省庁が「脱原発が実施されれば電気料金を大幅に引き上げなければならない」という報告を2度も行ったのに、これを文政権は任期5年間にわたり無視し続け、公表もしなかったことが分かった。

 6日に本紙の取材をまとめたところによると、産業通商資源部は2017年5月24日と6月2日に当時の政権引き継ぎ委員会に当たる国政企画諮問委員会に「脱原発に伴う電気料金引き上げ規模推定」報告書を提出した。「大統領選挙の公約通り脱原発を実行した場合、2018年から2030年までに、2016年に比べ毎年2.6%ずつの電気料金原価引き上げ要因が発生する」という内容だった。文政権最後の年である2022年の引き上げ率は14%、2025年は23%、2030年は40%というものだ。

 これにより、国民が負担すべき電気料金は雪だるま式に増えると推定された。2016年に55兆ウォン(約5兆7800億円)水準だった電気料金が2022年に62兆ウォン(約6兆5140億円)へと7兆ウォン(約7350億円)増え、2030年には75兆ウォン(約7兆8800億円)へと20兆ウォン(約2兆1000億円)増加する。2018年以降、毎年1兆-20兆ウォン(約1050億-2兆1000億円)以上の追加負担額が発生し、「2030年までの13年間で累計約140兆ウォン(約14兆7300億円)の電気料金原価引き上げ要因が発生する可能性がある」という内容もこの報告書に書かれている。

 このような内容はこれまで文政権が広報してきた電気料金に関する内容とは大きく異なるものだ。文政権は執権期間中ずっと「(文大統領の任期が終わる)2022年まで電気料金引き上げ要因はない」「2030年には電気料金が10.9%上がるだろう」と言ってきた。脱原発で国民の追加負担はないか、あるいはわずかな水準にとどまるという話だった。

 文政権はこれまで、産業通商資源部の報告内容を公表していなかっただけでなく、報告書が存在するという事実さえ国民に知らせていなかった。特に電気料金の大幅引き上げ報告書を作成した同部の公務員を怒鳴りつけるなど、口止めを試みていたことも明らかになった。このため、「脱原発をめぐる是非を問う声が上がるのを防ぐため、文政権は執権当初から事実上の『電気料金詐欺』をしてきたのではないか」という声もある。

 産業通商資源部は文氏の大統領当選に備え、「大統領選挙2カ月前から脱原発業務報告を準備していた」という。ほかの候補者が当選した場合に対する業務報告書も用意されていたとのことだ。つまり、誰が当選するのか分からない状況で分析した「2030年40%電気料金引き上げ見込み」は、同部としては電気料金引き上げに関する変数をありのままに反映させた結果だということだ。国際原油価格、経済成長率、物価上昇率、太陽光・風力発電のための送電網追加建設といった不確実要因はすべて除外し、「脱原発に伴う電気料金引き上げ効果」のみを反映させるため、エネルギーミックス(電源構成)のみを考慮したと言われる。

 割安な原発の稼働を減らし、太陽光・風力・液化天然ガス(LNG)発電を増やせば電気料金は上がるしかない。再生可能エネルギーを大幅に拡大したドイツやデンマークなどの国々も例外なく経験したことだ。ドイツでは再生可能エネルギー補助金などを設けるために税金・付加金が電気料金の50%を超える。あるエネルギー専門家は「当時の産業通商資源部職員たちとしては、脱原発をするにしても、電気料金が引き上げられるという事実は国民に知らせなければならないという考えがあったのだろう」と話す。

 ところが2017年5月24日に1時間以上行われた業務報告の場は「恐怖のムード」に近かったという。「雰囲気は殺伐としていた」「(文政権の人々が)怒鳴りつけた」「圧が強くて討論できる雰囲気ではなかった」ということだ。当時の国政企画諮問委員会は金振杓(キム・ジンピョ)委員長を含めて6分科会・委員34人からなっていた。産業通商資源部が所属する経済第2分科会の委員は6人だったが、全委員34人の半数を上回る20人が同部の業務報告の場に集まってきたという。脱原発と電気料金について、文政権関係者たちが大きな関心を示していたということだ。

 当時、経済第1分科会委員だった洪鍾学(ホン・ジョンハク)元中小ベンチャー企業部長官、社会分科委員だった崔敏姫(チェ・ミンヒ)前国会議員も同日の会議に出席した。業務報告の場に来た10人余りの同部職員はこれらの人々からひどい目に遭わされたという証言が飛び出した。「電気料金引き上げ問題を今、引っ張り出してきたのはなぜだ」「エネルギー転換(脱原発)に反対するのか」「太陽光を増やせば電気料金の負担が減るではないか」といった攻撃的な質問が相次いだということだ。

 ある関係者は「文政権執権当初、官界は『脱原発反対は夢にも見せてはならない』という雰囲気だった」「電気料金引き上げは口にもするなというサインだったのだろう」と語った。これに対して、当時委員だった洪鍾学元長官は「会議に出席したことしか覚えていない」、崔敏姫前議員は「勉強のため(産業通商資源部業務報告の場に)行った。(電気料金引き上げの見通しなどが)気になって、質問したことはある」「私はエネルギー専門家ではないので、(当時)私が言ったことは価値がないものだ」と言った。

 産業通商資源部の2回目の業務報告から1カ月後に行われた2017年7月の国会業務報告で、当時の白雲揆(ペク・ウンギュ)同部長官は「現政権が終わる2022年まで電気料金は引き上げ要因がない」と正反対の話をした。当時の金太年(キム・テニョン)共に民主党政策委員会議長も「脱原発をしても今後5年間、電気料金の引き上げはない」と言った。文政権は一方で「電気料金は心配ない」などと国民に対して広報戦を繰り広げておきながら、韓国電力の経営難がさらに厳しくなっているさなかに1兆6000億ウォン(約1680億円)台の韓国エネルギー工科大学(韓電工大)を設立し、太陽光・風力により電力の安定性が下がったら不足した電気をロシア・中国から導入すればいいなどという計画を発表した。文政権が5年間抑え付けてきた電気料金問題は、韓国電力の急速な経営悪化を招くなど、現政権になって爆発寸前に達している。

 文前大統領は大統領候補だった時に「原発政策を全面的に見直す」として、新古里原発5・6号機の建設中止や新規原発の全面中止および建設計画白紙化、2030年までに太陽光・風力など新再生可能エネルギーの発電割合を20%にまで拡大させることなどを公約としていた。

朴恩鎬(パク・ウンホ)社会政策部長

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