先日、日本のある外交関係者が記者と会った際、席に座るやいなや男性アイドルグループBTS(防弾少年団)の話を切り出した。BTSが米ホワイトハウスでジョー・バイデン大統領に会い、アジア系に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)について語る映像を日本のテレビニュースで何度も見たというのだ。韓国のソフトパワーと民間外交にいつもうらやましさを感じる、とも言った。

 単なるリップサービスかもしれないが、日本で暮らしていると「韓流パワー」に驚き、自負心を感じるのは事実、日常的なことだ。日本で誰に会ってもはじめは韓国ドラマ・映画の話から始める。今も渋谷の名所・ハチ公前広場にはBTSのアルバムの広告が掲げられ、ファンたちが集まっている。「日本の若者の街」原宿でも韓流が一つのジャンルになった。韓国系フランチャイズ・レストランが集まった韓国料理フードコート、サムスンのスマートフォン「Galaxy(ギャラクシー)」、ネイバー系のトーク・アプリ「LINE(ライン)」のキャラクター・ショップ「LINE FRIENDS(ラインフレンズ)、韓流アイドルが宣伝する化粧品を掲げたコスメショップが原宿の大通り沿いに並んでいる。

 こうした日本国内のムードが顕著に現れていたのが、観光ビザを取るため今月、駐日韓国大使館領事部に集まった日本人たちの姿だった。韓国へ行く観光ビザを取ろうと数十人が領事部のビルの前に徹夜も辞さずに並び、韓日両国のメディアが総出動するハプニングも起こった。最近は領事部が旅行日程に応じてビザ申請日を指定するようになり、こうした徹夜の行列は消えたが、インターネット上では依然として「朝6時に到着すれば40番台の番号札を受け取って並べる」などの情報がシェアされている。

 それと同時に、両国の民間交流が深まる度にその反作用として民族感情も膨らむようだ。日本国内における韓国観光ビザ取得の熱気を記事にすると、「日本人が韓国に観光でやって来るのは歓迎するが、韓国人が日本に行くのはダメだ」とチクリと忠告する読者からのメールが届く。日韓の文化界が国境を越えて心を通わせても、その結果物が「K(韓国のもの)」なのか、それとも「J(日本のもの)」なのかを重視する人も相変らず多い。日本人映画監督の是枝裕和氏が韓国の映画制作会社CJ ENMの投資の下、韓国人俳優たちと韓国語の映画を作っても、韓国人アイドル人気に鼓舞された韓日の芸能プロダクションがコラボして韓国風の日本人アイドルグループを作っても、そう言う。

 反対に、一部の日本人の間では「韓日のメディアは韓国関連の人気を誇張している」という根拠のない不満や、「韓国アイドルの人気は日本のアイドルにすぐに越えられる」といった対決構図作りが同様に広がっている。両国の一部に見られるこうした極端な反応はリアルタイムで翻訳され、シェアされる。韓流人気とそれによる民間交流拡大が、一方では互いに対する反感を刺激する原因となる皮肉な状況が広まっているということだ。

 韓流の人気と影響力が驚きを超えて当たり前のように受け止められる時期が来ている。今は韓流の量的成果と影響力に誇りを持ちつつ、その人気をもう少し開放的かつ柔軟に受け入れ、評価する成熟した大人の態度についても考えてくれればと思う。

東京=崔銀京(チェ・ウンギョン)特派員

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