▲3日午後、京畿道の烏山米空軍基地に到着したペロシ米下院議長。写真=駐韓米国大使館のツイッターより

 米国で序列3位のナンシー・ペロシ米国連邦議会下院議長が韓国を訪問したが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がペロシ議長に直接会わなかったことに政界関係者や外交関係者から「理解しがたい」との声が相次いでいる。大統領選挙戦当時から就任後に至るまで一貫して「強固な韓米同盟」を訴えてきた尹大統領の外交姿勢と矛盾するからだ。

 今月1日からソウル市瑞草区の自宅で休暇中の尹大統領はこの日、ペロシ議長と直接顔を合わせず40分間の電話会談だけを行った。これについて韓国大統領室の崔英範(チェ・ヨンボム)広報首席秘書官は「尹大統領は休暇のため会談の日程確保が難しかった。このことは事前に米国にも説明し、ペロシ議長もこれを十分に理解した」「全ては国益を総体的に考慮して決めたことだ」とコメントした。

 しかし今回は米国連邦議会下院議長による20年ぶりの来韓だ。そのため尹大統領はたとえ休暇中でも必要な対応は十分にできたとの指摘が相次いでいる。尹大統領は自らの就任を祝う使節として来韓した米国の「セカンド・ジェントルマン(副大統領の夫)」ダグラス・エムホフ弁護士(5月10日)やジャネット・イエレン財務長官(7月19日)はもちろん、ポール・ウォルフォウィッツ元世界銀行総裁(6月3日)といった前職との面会にも応じた。ところが米国議会の第一人者で当選18回、ワシントンでは最も存在感があるとされるペロシ議長との会談は行わなかった。これはどう考えても納得がいかない。梨花女子大学の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「単なる下院議長ではなく伝説のような女性政治家だ。北朝鮮の非核化問題で協力を求めるため尹大統領には会ってほしかった」と残念そうに述べた。

 一部では「尹大統領は中国を意識してペロシ議長と会談しなかった」との見方もある。ユ・スンミン元議員は自らのフェイスブックに「新政権は韓米同盟を強調してきたはずだが、発足直後から外交政策がぶれていては国益に何のプラスにもならない」と批判した。琴泰燮(クム・テソプ)元議員は「ペロシ議長やその背後の多くの米国人たちがこのメッセージの内容をどう読み取るだろうか」「大統領室や政府は非常に重要な仕事に取り組む際にギアがかみ合わないと感じる」と指摘した。英国の日刊紙ガーディアンは「韓国の大統領は中国の好意を得るためペロシ議長との会談を避けたと疑われている」と報じ、フィナンシャル・タイムズは「尹大統領がペロシ議長を冷たくあしらった」との見方を示した。

【写真】ペロシ氏が来韓した3日午後、ソウル市内で休暇を楽しむ尹大統領

 これに対して韓国大統領室の関係者は「2週間前の時点で会わないという結論を出した。中国から会うなという圧力もなかった」と反論した。ただし米国のバイデン大統領は「中国の反発による東北アジアでの緊張の高まり」を理由にペロシ議長による今回の歴訪には否定的で、米国国内でもその時期について批判が高まっていた。尹大統領にはこの点が報告されていたとの話もある。

 ペロシ議長入国の際に韓国政府や国会関係者が出迎えなかったことについても「対応がずさん」との批判が相次いでいる。フィリップ・ゴールドバーグ駐韓米国大使がツイッターにアップした写真を見ると、3日夕刻に烏山の米空軍基地に到着したペロシ議長をポール・ラカメラ韓米連合司令官ら米国の関係者が出迎えたことが分かる。これについて韓国国会は「空港に出迎えに行かないことは米国側から事前に了解を得た」と主張しており、韓国外交部(省に相当)の安恩珠(アン・ウンジュ)副報道官は「儀典の指針によると、議会関係者が来韓する際に通常は韓国行政府の関係者は出迎えない」と説明した。しかし韓国与党・国民の力の河泰慶(ハ・テギョン)議員は「韓国の国会議長が米国に行き、米国議会関係者が誰も出迎えず冷たくあしらわれたと考えてほしい」「この深刻な欠礼に国会議長は謝罪すべきだ」と主張した。批判が相次いだことを受けペロシ議長が出国する際には李光宰(イ・グァンジェ)国会事務総長が見送った。

 外交関係者の間からは「ペロシ議長が今回訪問した各国と比較すると、韓国側の対応の冷たさはあまりにひどい」との指摘が相次いでいる。ペロシ議長は今回台湾の蔡英文・総統をはじめシンガポールのリー・シェンロン首相、マレーシアのイスマイル・サブリ首相と会談し、日本の岸田文雄首相とは5日に朝食会に出席する予定だ。今年5月にはウクライナとポーランド、6月にはイタリアを訪問したが、その際も各国の首脳と会談した。ペロシ議長は2015年に米国議会下院の民主党院内総務として来韓したが、その際には当時の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と会談している。

キム・ウンジュン記者

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