▲KIEPの延元鎬(ヨン・ウォンホ)経済安保チーム長/オ・ジョンチャン記者

 韓国の「チップ4」参加を巡る議論が激しくなりつつあるが、経済安全保障分野で韓国を代表する専門家の延元鎬(ヨン・ウォンホ)対外経済政策研究院(KIEP)経済安保チーム長(博士)は7日、本紙とのインタビューで「国益のためにためらうことなくチップ4に参加すべきだ」との考えを示した。延氏は「チップ4への参加は韓国が中国の技術面での追撃に対抗する手段になるのはもちろん、米国の反中政策で韓国企業が中国で被る被害を最小限に抑えることにもつながる」「チップ4について韓国国内では間違って認識されている点が決して少なくない」と述べた。

 米中間の通商問題や技術面での覇権競争などを主に研究する延氏は先月末に米国を訪問し、米国務省、通商代表部(USTR)、米国半導体工業会(SIA)などの関係者と会いチップ4関連の議論を確認して今月6日に帰国した。

 チップ4は米国が安定した半導体サプライチェーン構築を目指し、韓国、日本、台湾などに呼びかけている協議体だ。米国は半導体の開発・設計分野で圧倒的な技術優位を確保しており、韓国はメモリー半導体分野で1位、台湾はファウンドリー(委託生産)分野で1位だ。日本は半導体の素材や製造装置分野で世界的な競争力を確保している。

 日本と台湾はチップ4への参加を早期に確定し、韓国政府もチップ4に参加する方向で調整中だ。しかし韓国国内では「韓国が米国主導のチップ4に参加すれば、中国での売り上げが多い韓国の半導体産業が世界最大の市場を失いかねない」との懸念もある。

■「チップ4の意味を間違って解釈し中国の顔色をうかがっている」

 延氏によると、韓国国内ではチップ4について「反中連合体」との見方があるため、中国の顔色をうかがう状況を自ら招いているという。チップ4構想は当初、米国がコロナ期間に直面した半導体不足が繰り返されないよう、主要な製造国で協力を強化するために浮上したもので、昨年後半から米国務省を中心に議論が続いており、今は米商務省や通商代表部など政府横断の事案になったというのだ。延氏は「韓国ではチップ4という言葉は半導体産業全体の協力を意味しているが、米国では半導体の製造に限定した国家間協議体という意味で、FAB4と呼んでいる」とも説明した。

 延氏によると、チップ4の性格は「拘束力のある国際協定や機関ではなく、実務レベル(局長級)の多者対話窓口」であり「参加国間の人材養成、R&D(研究・開発)協力、投資インセンティブの提供、サプライチェーンの多角化などは議論の対象ではあるが、中国に対する制裁は議論されていない」という。反中戦線ではなく産業協力を強化するための実用的な協議体に近いということだ。延氏は「半導体産業の中国輸出依存度が高い日本(32%)と台湾(60%)は特別な問題もなく参加を決めたが、これもチップ4に過剰な意味付けをしていないからだ」と指摘した。

■「中国の技術面での追撃を阻止し韓国企業の被害を最小化」

 延氏は「韓国にとって半導体産業で懸念すべき未来は、中国が不公正な方法で急速に技術を発展させ、韓国に取って代わることだ」とも指摘し、チップ4を「中国の不公正な技術追撃に対抗できる手段になる」と予想している。延氏によると、世界の半導体産業における主要なプレーヤーたちと常に交流できれば、中国との技術格差をさらに広げることができるという。また政府から補助金を受けている中国の半導体メーカー各社が低価格で市場を混乱させないよう、制限を加える方策もチップ4で議論できる。例えば最近米国のアップルは中国の長江メモリーテクノロジーズ(YMTC)からメモリーチップの供給を受ける方向で検討しているが、この場合もチップ4を通じて中国政府による補助金を問題視できるというのだ。

 延氏は「対中制裁で韓国の半導体メーカーも被害を受ける恐れがあるが、チップ4では制裁のレベルを調整するため意見を提示できる」「そうなれば中国で事業を行う韓国企業を守る際にもプラスになるだろう」と分析している。

 延氏によると、中国もチップ4が協議体の性格であることを理解しているため、過剰な反発はしていないという。そのため延氏は「THAAD報復のような事態は起こらない」と予想している。中国との半導体協力の可能性については「韓国は米国などと先端半導体工程で協力し、中国とも28ナノ以上の工程で協力できる」との見方を示した。

イ・ボルチャン記者

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